Vampire Knight
□聖ショコラトルデー前夜
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聖ショコラトルデー…
この日はいつもは高嶺の花であるナイトクラスに近付ける数少ないイベントである。
特に女子生徒にとっては意中のナイトクラスにアタックできるチャンスであり、この日にかける気合いも一潮だ。
これはそんな聖ショコラトルデー前夜の月の寮の話である。
「…英、一応聞いておくが…また何かやらかしたのか?」
そう尋ねるのは長身の青年。学園規定のネクタイをせず、緩められた首元が何ともワイルドである。彼の名は架院暁。
彼に英と呼ばれた金髪の美少年の姿は…その美少年ぶりを台無しにするには十分の…頭の上と両手に水のたっぷり入ったバケツを乗せた何とも情けない姿であった。
英「違うっ!!僕は…僕はただっ!!授業中でも枢様への忠誠を忘れないようにと枢様下敷きを作っただけだっ!!!!」
暁「…で、それが寮長に見つかった…と。」
英「そんな可哀想なモノを見る目で僕を見るなっ!!!!」
そういってわめき始める英の両腕は僅かにプルプル震えている。飛び抜けた身体能力を持つヴァンパイア、しかも英は貴族階級のヴァンパイアだ。その英が…一体どれだけの間、その姿を晒していたのだろう…。
そう思うと暁は静かにため息をついた。
暁(「どうしてこいつはこうも学習しないんだ?…いつもいつも飛ばっちりをくらう俺の身にもなってほしい…」)
苦労性の彼はそんな事を考えながら未だわめき続ける、はた迷惑な従兄弟の姿を眺め、またその彼を見捨てられない自分の性分に再び静かに嘆息した。