Vampire Knight
□聖ショコラトルデー当日
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「名前様っ、…ずっと、ずっと!!お慕い申し上げておりましたっ!
…私、私っ…!」
そういって顔を赤らめ、耐えきれなくなったのか泣き始める美少女を前に名前はどうしたものかと思案していた。
名前(「さて、どうしましょうか…。ある程度覚悟はしていたつもりだったのですが…。」)
そう彼が思うのも無理はない。このように月の寮の彼の部屋を訪れ、彼にチョコと同時に想いを伝えるのは今目の前にいる彼女で何人目だろう。片手で数えられなくなってから名前はすでにカウントを諦めている。
とにかく目の前で恥ずかしさの余り、泣き続けているこのナイトクラスの少女を何とかしなければ…心の中で一つため息をつき、名前は長身を少女の目線まで下げ、語りかける。
名前「どうか泣きやんで下さいませんか?
貴女には泣き顔より笑顔の方がずっと素敵ですよ?」
そう言うと下を向き泣いていた少女は顔を上げ、その瞳を期待で煌めかせる。
その瞳に名前は心の中で再び嘆息する。
名前「貴女のお気持ちは大変嬉しいのですが…私には受け止める事ができない。」
その言葉に期待で煌めく彼女の瞳はすぐに失望の色で染まった。
「…私では……私では相応しくないと…そう思われているのですね…」
そう呟く少女に
名前「そうではありません。貴女は十分に魅力的ですよ。」
「っ!ならっ!!」
名前「ですが、私は貴女を求めていない。」
その言葉に決定的な絶望を覚え、少女は長い廊下を泣きながら走り去って行った。
名前「…はぁ…」
ここ数時間で幾度も繰り広げたやり取りだが、何度やっても慣れる事はなく後味の悪さだけが残る。
それでも削られた分の睡眠を獲得するため、部屋の中に戻ろうとしたところ…
「冷たいんだね。」