今日は晴天なり
□恐怖の節分
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「鬼はー外ー!!」
掛け声と共に半蔵にパラパラと当たる無数の豆。
半蔵は眉間に皺を寄せ、声のほうを睨みつけると升を持った式が笑顔で立っていた。
「今日は頭領。ご機嫌麗しゅう〜」
「…何の真似だ」
常人なら怯える半蔵の睨みに式は臆することなく笑顔を浮かべ、ビスビスと豆を一粒ずつ半蔵に投げつける。
「何の真似って言われてもねぇ…今日は節分だから豆を撒いてるだけですよ?」
「…ならば何故俺に向かって投げる」
「だって“鬼”の半蔵でしょ?」
いったい何の問題があるんですか?という顔の式。それを見て額に青筋を浮かべ、拳を握る半蔵。
「おっと、この程度で怒るなんて大人げないなぁ」
「…言い残したいことはそれだけか?」
「怖ッ!…と言うとでも思いましたか?今日の私は一味違うのだ!頭領、ふりーず!!」
「ふりーず?」
「南蛮の言葉で動くなって意味です。動いたら撃ちますよ〜」
式はそう言って半蔵に黒い鉄の塊を向ける。
「…何だそれは」
「鉄砲です」
「戦で見るものとは形状が違うが…」
「これは自動式拳銃といって火縄銃とは違い連続で弾を撃てる優れ物です。今から三百年程後の時代の武器なんですよ。すごいっしょ!」
「それが真ならば何故お前が持っている?」
「のり」
「のり!?」
「そんなことはどうでもいいんです!実はこの鉄砲のなかに入っているのは弾じゃなくて豆なんです。知り合いに改造してもらったんですが…名付けて『ハト豆びっくり1号』!!わかりましたか?」
「…お前が馬鹿だということだけは。そのくだらん玩具で俺に謀反を起こすつもりか?」
「とんでもない!ただ最近頭領が疲れてるみたいだから楽しませてあげようかな〜と…」
しゅんと落ち込む式を見て半蔵は、それならば休日くらいゆっくり休ませてくれと思いながらも少しだけ嬉しく思う。
「もう十分だ。いい加減それを下げろ」
「いえいえ、まだ駄目ですこれからが本題なんで。これからちょっとした遊びを始めます。内容は簡単!今日一日私たちから逃げ切ってください」
「…断る」
「家康様に許可は取っていますよ?ほら、証拠」
式の投げて巻物を半蔵が受け取り、中を確認するとそこには
『式へ 今日一日半蔵を好きにして良いんであのことはバラさないでください。マジで言わないでください。土下座でもなんでもするからホントに言わないで! 家康より』
と書いてあった。
「貴様…主を脅したのか」
「やだな〜、正当な取引ですよ。まあ、そういうことなんで付き合ってくださいね」