今日は晴天なり
□未知との遭遇
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もうじき日が暮れそうな茜色の空、鬱蒼と生い茂る木々……ここは何処?
「困ったな〜、こりゃ完全に迷子ですね……」
今日も人里離れた師匠のもとへ医術の教えを請いに向かい、新たな事を学ぶことができた。
師匠の機嫌も良かったことだし全てがうまくいっていたはずだったのだが、思わぬところに落とし穴があった。
日が暮れる前に帰ろうと思い普段とは違う道を歩いていると、いつの間にか道は獣道に、林は森にとどんどん山の中に入り込んでいってしまった。
「う〜ん、日が暮れちゃいそうですし…お化けとかでたら怖い……山賊とかいたら…まあ、その程度なら倒せますか」
師匠にいろいろ叩き込まれているので戦闘は全く問題ありません。
師匠より恐い人間はそうそういないでしょうし……
よし、早く帰りましょう。このさい斜面を駆け降りりゃあここから出られるかもしれませんね…
式が覚悟を決めた時
ガサガサッ
前方の草むらから黒い影が飛び出してきた。
「つ、ついに出ましたか!!」
こんなことなら師匠に陰陽道を習っておけばよかった……ん!?犬?
目を凝らして見てみると黒い影はお化けではなく茶色の犬だった。
式に気付いた犬は唸り声をあげる。
「なんだ、ビビって損したじゃないですか……君、怪我してるんですか?足を引きずってるじゃないですか!」
これは医者の卵としてほっておけませんね。
「ほら、怖がらないでこっち来てください。別に君を捕まえて食べようなんて思ってませんよ。見るからにまずそうですし……」
若干失礼なことを言いつつ式は犬に向かって手を伸ばす。
噛まれますかね……その時は鉄拳制裁を…
犬は式の言っていることを理解したのか心を読んだのか唸るのを止めて近づいてきた。
「いい子ですねぇ、薬と包帯っと……よし」
我ながら腕があがったな…これなら問題ないでしょう。
「もう大丈夫ですよ。あ〜、日が暮れましたね…今日は野宿か……」
家の布団が恋しい…お腹もすいたし……
「山小屋とかありませんかね〜、ん?どうしたんですか?」
犬が式の足に纏わりついてきたと思うと少し離れこちらを見てくる。
ついてこいってことでしょうか…
ここに居てもどうにもならないと思い式は犬の跡を追って歩き出した。