今日は晴天なり
□入れ替わり珍騒動!風魔編
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ここは小田原の城下町の一角にある古びた屋敷。何やら不気味な雰囲気が漂っており、怪しげな人物が住んでいるため、市井の者達に化け物屋敷と陰で呼ばれている。
「へぇ〜、ほぉ〜。煮干ねぇ……」
その化け物屋敷の縁側に座り、本を読みながらブツブツ独り言を言っているのは、屋敷の住人である私、式。
「式、先ほどから何をしている?」
「あれ?風魔さん。いつから居たんですか?」
「…一刻程前からだ」
「其ならさっさと声を掛けてくれればいいのに…」
「…何度も掛けたがうぬが気付かぬから……」
私の背後に現れたこの人は風魔小太郎さん。見た目はとても怪しいが(多分)人間です。
「それはすいませんでした。どうも集中すると周りが見えなくなってしまって……」
「そうか…それでうぬは先ほどから何を読んでいる?」
「これですか?『猿でもできる超危険一部手抜き魔術集』です」
そう言いながら私は風魔さんに表紙を見せる。
「魔術?紛い物ではないか?」
「いいえ、本物です。師匠から(勝手に)借りたんですから間違いありません」
「ほう、どのようなものがある?」
少し興味が出たのか私の隣に腰を下ろす風魔さん。
「えーっと…例えば『百里四方全てを無に返す邪法。用意するものは千人の生贄と地獄の黒炎…』」
「猿でもできると言うわりには材料が集まりそうにないではないか…それ以前に内容がやけに物騒よな……」
「まあ『超危険』って書いてありますからねぇ…まだ続きがあります『又は煮干百個とそこら辺で起こした只の火でも可』」
「Σ差がありすぎだろう!それで百里四方を無に返すのか!?」
「『ただし、この場合は失敗して地球そのものが消滅する場合があります。十分に注意しましょう』」
「…滅茶苦茶ではないか……」
顔をしかめる風魔さんにそうですね〜、と笑いながら頁を捲っていく。
「あっ!これ面白そう『動物の言葉がわかるようになる呪文』」
「ふむ、それなら害は無さそうだ。我の役にも立つ…」
「じゃあやってみましょうよ!私かー君と話してみたいです。えーっと『二人きりになり、呪文を唱えましょう。キリーギリス〜サンショウーウオ〜タケノコハエール〜』」
「…呪文かそれは?…ッ!なんだ!?」
ピカーッ!
風魔さんの疑問をよそに(だって書いてあるんだもん)私が謎の呪文を唱えると本が輝きだし、強烈な光に包まれた。
「う〜、眩しかったですね……って、あれ?幽体離脱!?」
「ぐッ……治まったか…式無事…か……?」
光が治まり私が目を開くと何故か目の前に本を持った自分が居る。
なんで私が目の前に!?
ん?なんか声が変だしやけに視線が高くなってるような……
唖然としている自分?から視線を外し、己の体を見る。
青白い肌に触ったら怪我をしそうな小手、左胸を見ると“無”と書いてある鎧?が着いている。
なんか風魔さんみたいですね……いやいや、まさかね!?ありえないありえない!きっと夢を見てるだけですよ。師匠の本勝手に持ち出した呪いかも!?
半パニックになりながら必死に脳をフル回転させる。
うん、夢だ夢…あ〜、早く起き「うぬは何者だ…」
現実逃避しようとしていると、自分?が突然声を掛けてきた。
「其れはこっち台詞です。貴方は私のドッペルゲンガーですか?」
やっべー、確かドッペルゲンガー見たら死んじゃうんでしたよ。まだ若いのに〜!
とりあえず祈祷師を呼んで「式…か?」
さっきから考えを遮らないでくださいよ。現実逃避できないじゃないですか!
少し不安げな顔の自分?と見つめあう。