今日は晴天なり
□新年早々物騒な我が家
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「おおっ!こ、これまさか…伊勢海老!?こっちは雲丹とアワビ!か、蟹まで!?」
「そうだよ。この前沖に出た海賊を半殺…追っ払ったら漁師さん達がお礼にってくれたんだ」
目の前に並んだおせちの豪華さに感動していると斜め前に座っている父がえっへんと胸を張ってそう言った。
…今半殺しって言いかけたよね;
いや、今日は血生臭い話はやめておこう。
「へ、へ〜そうなんだ…よかったねぇ」
「あの時の一葉さん凄かったわよ。刀を持って海賊船まで海面を走って行ったときは怪我をしないか心配したけど…一刻も経たない内に血塗れの海賊船に乗って帰ってきたときは惚れ直しちゃったわ」
「いや〜//」
「ちょっ、母さん!私が折角気を使ったのに…!というか父さん海面走ったの!?そして母さんの感想いろいろおかしくない!?頭大丈夫?」
「あれ?式は海面走れないのかい?駄目だよそんなんじゃ。剣術だけじゃなくて他のことも教えておくべきだったなぁ」
海面を走ることは忍の常識なの?聞いたことないんだけど…
「うーん、こんなに豪華ならもっと高いお酒を買ってくれば良かったなぁ…」
私がお土産に持ってきたお酒を見ながらそう言うと、父が笑いながら御猪口にお酒を注ぐ。
「そんなこと気にしなくて良いよ。式も一人暮らしで家賃とか生活費が結構かかるだろうし」
ギクッ!
実はまだ父さん達に頭領の屋敷に居候してるって言ってないんだ…
前なら手紙にでも書いて知らせたんだけど、この前頭領が任務で皆とうちの旅籠に泊まったとき父さんといろいろあったし…また手合わせ(という名の殺し合い)をされたら怖いからね。
「姉上どうした?顔色が紫だぞ」
父の言葉に冷や汗をダラダラ流していたら目の前に座っている弟の葉慈が眉を顰めながら聞いてきた。
「なななんでもない;」
「まさかその黒豆が腐っていたとか…」
「いやいや大丈夫!すっごく美味しいよ!流石は葉慈。天才!!」
眉を顰めたまま黒豆を一粒食べる葉慈に必死で弁解する。
あ、葉慈は忍じゃなくてうちの旅籠の料理人やってるんだ。別に才能がないわけじゃないんだけど、病的な方向音痴なうえ天然だから忍は無理だろうという父さんの判断で料理人になったんだ。
私たちが小さいときに男の癖に料理をしているとからかってきた近所の悪ガキどもを血祭りに上げた日々が懐かしい…(母さんにめちゃくちゃ怒られました)