今日は晴天なり
□正月奇談
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正月は毎年師匠の家に押し掛けてお年玉とお節を強奪していたが、今年は友達の風魔さんがいるのでお節を(強制的に)作ってもらおうと思っていたのに…
「用事があるんですか…?」
「ああ」
まさかの予定ありな風魔さん。
里帰りするのか聞いたけど答えは否。
「正月に里帰りしないなんて親不孝者ですね…」
「そう言ううぬはどうなんだ」
「私は天涯孤独なんで」
「む………我も似たようなものだ」
何の気なしに言ったのに気にしたのか私の頭をわしゃわしゃと撫でる。
別に私は何とも思ってないんですけどね。
「そっか〜、風魔さん来れないのか〜。師匠は暫く出かけるって七日前からいないし」
あれは絶対私から逃げたんですよ。
お年玉あげたくないからって酷いですよね〜
「風魔さんと一緒にいたかったのに…」
「ッ……」
残念だな〜、と思ってそう言うと頭を撫でていた手がピタリと止まった。
「?…あれ、風魔さんなんか顔が赤「初詣には行かぬのか?」い、行きますけど…」
「何処へ行く?」
「赤沼神社のつもりですが…」
「そうか」
この日はそれっきり黙ってしまった風魔さんを放置して、お正月のお節をどうしようかずっと悩んでいた。
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今日は待ちに待ったお正月です。ホントは嬉しいはずなのに…
「侘しい…」
目の前にある朝食の煮物とご飯。今日はお正月なのに…おいしいもの食べたかった……
さっきお餅があったので焼いてみたんですが、何故か破裂しました。
お餅って怖いですね!
「お酒はこの前全部飲んじゃったし………あー!考えててもしょうがない!さっさと食べて初詣に行きましょう」
カカカカッとご飯を箸で一気に喉へと流し込み、財布を掴んで屋敷から出て行こうとした。
「わん!」
「かー君。あけましておめでとうございます。え?もしかして初詣に行きたいんですか?」
私の姿を見てブンブンと尻尾を振りながらじゃれてくるかー君。
散歩に行きたいのか足に擦り寄ってくる。
「わんわん!」
「駄目ですよ;赤沼神社は人が多いから踏みつぶされちゃいます」
「くーん」
耳を伏せ、うるうるした眼で私を見上げるかー君に心がズキズキと痛む。
耐えろ式!ここで負けたらかー君が怪我をしてしまうかもしれない。
「うッ……ごめんねかー君!お土産買ってくるから!!」
後ろからかー君の鳴き声が聞こえるが、振り返らずに全力で走って門から外に出て行った。