今日は晴天なり

□冷やかしお断り!
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時は戦国乱世。
敵を欺き討ち取るため、様々な情報が飛び交う中、とある噂が流れていた。
その者を雇えばいかなる情報でも手に入り、多大な武力を獲ることが出来る。また、妖しげな術を使い望みを叶える。
ただし、莫大な報酬を要求される。

はたして噂は嘘か真か…

この噂を信じ、その者を探す者もいれば、信じず鼻で笑う者もいた。


とある名も無き山中。人里離れた屋敷に一人の人物が住んでいた。

そう、この人物こそ噂の正体……


「名は式といい、現在暇で脳味噌溶けそう………駄目だ。暇潰しに解説ごっこしたけどやっぱり暇…てか虚しくなってきた……」


誰もつっこんでくれないしー、聴こえるのは虫と鳥の声だけ…孤独感増してきた……


「あ〜、暇ーー!最近仕事の依頼来ないし。料金設定高すぎたかな……」


ゴロゴロと畳の上を転げまわりながらブツブツと独り言を言ってみるけどやっぱり暇。あっ、この前溢したお茶がシミになってる;


「暇は人生最大の敵だー!なんか面白いことないかなぁ?誰でも良いから客来い〜!!」


転がりながらそう叫ぶと突然何かに体がぶつかりうつ伏せの状態で止まった。


「なんだよ、こんな所に柱なんてなかったぞ?」


軽く苛つきながら脇腹に当たった柱?に視線をやると……足?
うん…足……。土足じゃないからまあ良いんだけどさぁ。というか土足だったらブチ切れて足へし折ってる。
本来だったら鴨(客)が来た!って直ぐに起き上がるんだけどね……
肌の色がね、気のせいか青いんだよ……気のせいかな?気のせいだよね☆
きっと暇すぎて幻覚が見えたんだな。よし、寝よう…


「………」

「起きろ」


結論が出て瞬時に眠りにつき、夢の世界へ逃避行しようと思ったのに上から声が降ってきた。
起きない知らない聞こえなーい。僕は寝るんだからさっさと帰れ!


「グゥ…」

「寝ているのか……ククク、寝込みを襲うのは気が進まぬが…まあ良い。うぬを犯し「Σ起きましたーー!」チッ」

「『チッ』じゃねぇよこの変態!勝手に人の家に入ってくるな!今直ぐ出てけ!!」


危ない単語を口にしかけたこの変態、風魔小太郎は前に北条から依頼を受けたとき出会った風魔忍軍の頭領。
別にこいつが見た目人間じゃないとか、腕の関節無視した攻撃をするのがキモイとか、性格に致命的な問題があるとかそんな理由で邪険にしているわけではない。
何故か、本当に何故なのか全く理解出来ないが僕はこいつに好かれているらしい。
ただ好かれているんなら害は無いんだけど、こいつは隙有らば僕を襲おうとしやがる。
最近流行りの草食系男子とやらを見習え!お前は肉食系通り越して犯罪者だ!


「誰でも良いから来いと言ったのはうぬだろう。我はその望みを叶えてやっただけだ」

「客来いって言ったんだよ。金無い奴は帰れ!表の看板にも『押し売り、客じゃない奴、変態立ち入り禁止!』って書いてあるだろうが!!」

「ククク、其れは気付かなかったな。ならば客であれば文句あるまい」

「駄目」

「何故?」

「看板に『変態立ち入り禁止』って書いてあるだろ。だから出てけ」

「我は変態ではない」


真顔で否定しやがった…


「一度鏡見てこい。薄ら笑い浮かべてる変態が映ってるから」


今度看板を『変態(風魔小太郎)』って書き換えよう。

部屋の角でフーッと威嚇する僕を見ながらニヤニヤ笑っている小太郎。いつの間にか座布団に座って勝手に入れたお茶飲んでやがる。居座る気だなチクショウ…


「暇なのだろう?転げながらブツブツと独り言を言うほどに…」

「Σその時から居たのか!?」


ぎゃーー!聞かれてたー!!恥ずぅ//!

顔に熱が集まるのを感じながら、ふとあること思い出した。


「そうか…犯人はお前だな!」


立ち上がりビシーッと人指し指を突き付ける。が小太郎は何処から出したのか煎餅をボリボリ食べてやがる。


「犯人?」

「とぼけるな!最近妙な視線を感じたり、干してた下着が無くなってたり、食べかけの饅頭が無くなってたりしていたのは全てお前の仕業だな!!」


「知らぬ」

「嘘つけ!一昨日だって湯あみしてたら気配と視線を感じて置いてあった鉄球を外にぶん投げたら何かにゴチーンって当たる音がしたんだ!証拠として頭にたんこぶがあるはず…」


僕が勝ち誇ったように言うと


「ならば調べてみよ」


小太郎は全く動じずにそう言った。

何故に?まさか一日で治ってるとか?いや、いくら人間離れした(人間かどうかすら怪しい)小太郎でも流石にそんなはずない……?


「じゃあ、遠慮無く」


小太郎に近付き頭をペタペタ触ったりガンガン殴ってみるけど打撃以上の痛みはないらしい。


「おっかしいなぁ〜」


首を傾げながら紅い髪を引っ張ってみる(嫌がらせ)がやはりあまり痛がらない。


「放せ…我ではないとわかったか?」

「……一応」


全く納得出来ないが渋々頷く。


「そもそも昨日まで任務に付いていた我には不可能なことよ」

「Σなんと!?」


じゃあ、あれは誰だったんだろう?


「どうやら我の知らぬうちに虫がついたようだな…」

「虫?」

「ククク……式。まだ謝罪の言葉が聴こえぬが?」

「は?」

「我を疑いその上頭を小突き回しておきながら謝罪は無しか?」


ニヤニヤ笑いながら愉しそうに言う小太郎。
生き生きとした顔しやがって…ムカツク!


「…日頃から疑われるようなことをする奴が悪い」


腕を組んで僕は悪くないも〜んと言い小太郎から顔を背ける。
するとククク、と笑い出す小太郎。

怖ッ!


「謝らぬのなら我の依頼を受けよ」

「ぐッ…その程度で只なんて無理!」

「報酬は払う。うぬが欲しがっていた我の小手でどうだ?闇御津破はやれぬから昔使っていた物をやろう」

「ホント!」


武器収集が趣味の僕としては物凄く魅力的な話だ。


「わかった。依頼は何?北条から?」

「否、我個人の依頼だ」

「忍の仕事か〜」


潜入とかかな?それとも情報?


「クク、それも否だ…」

「…じゃあ何?」

「我のものになれ」

「嫌だ」


途中から嫌な予感がすると思ったら案の定だ。


「それ依頼じゃないだろ!」

「うぬは依頼者の願いを叶えるのだろう?我はうぬがほしい」

「こちとら身売りするほど困ってないし、億歩譲って身売りするとしても変態を相手にはしない」

「我は変態ではないと言っただろう」

「…もう土下座するんで帰ってください」


何この不毛な会話?
微妙に噛み合ってないし…

いいかげん小太郎の相手をするのが嫌になり、どうやって追い出そうか考えているとピーンッと閃いた。
まさに神降臨!
多分この変態を追い出すのは無理だ。ということは、僕がここから出ていけば良いんじゃないか。
一月くらい離れていれば流石の小太郎も帰るはず!

そう決めた僕は逃亡のため小太郎に背を向け、バレないようにさりげなーく窓に向かう。
表口から出ても良いんだけど部屋から出るには小太郎の隣を通過しなくてはならない。
ここに来てから僕から目を一切離さないうえ、先ほどの危険な発言をした小太郎の横を通るなんて恐ろしくて出来ない。

格子を破壊する事になるけど仕方ない。
窓から五歩程離れた場所で畳を蹴り、一気に加速し、格子に跳び蹴りを喰らわせた。

はずだった……


「何処へ行くつもりだ?」

「ブハッ!」


突然腹部に圧迫を感じ、気が付いたら畳に顔面から着地。
痛みで涙目になる。
起き上がりキッ、と腹を見ると腕が巻き付いている。
どうやらあの軟体生物もビックリな腕をビューンと伸ばし僕を捕まえたらしい。


「Σぎゃーー!気色悪!!」


急いで逃げようとしたが腰にガッチリ回された腕はビクともしないうえ、引き寄せようとしているらしく強い力で引っ張られる。


「ククク、我から逃げようとは…仕置が必要だな」

「いらん!放せ!」


窓の縁を掴み、必死で抵抗するが僕より圧倒的に力が強い小太郎。負けるのは時間の問題で…

絶・体・絶・命!

どどどうしよう;
そ、そうだ!

あることを思いつき、口笛を吹く。すると一羽の烏がやって来た。
以前怪我をしているところを助けたピーちゃんだ。
烏なのに何でピーちゃんなんだ、というツッコミは御遠慮いただきたい。

さあ、ピーちゃん!今こそ恩返しの時だ!あの変態の目玉をえぐってやれ!!

そう目でピーちゃんに語りかけるとバサリと羽を広げた。

これで変態ともおさらばだ!

覚悟しろと小太郎のほうを見ると、小太郎は何故かニヤリと笑い僕からピーちゃんに視線を変えた。
途端に羽ばたきを止めるピーちゃん。
え?何で?と思いながら見ているとピーちゃんは僕に近付き…

僕の手をつつきやがった。


「Σ痛ーー!!」


な、何故僕に攻撃を!?


「ククク、狼を手なずける我には造作もないことよ」


なんだと!?うう、僕にも計算外のことはある…
それにしても酷い!恩人を裏切るなんて!

尚も僕の手をつつくピーちゃん。抵抗も出来ず、ついに指が窓枠から離れた。

嗚呼…もう駄目だ。
目の前を走馬灯が駆け巡る。
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