今日は晴天なり

□暗闇の中で
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「あ〜あ、かったるい…」

「お前なあ…頭領に聞かれたら殴られるぞ」

「居ないから大丈夫ー」


只今絶賛警備中in夜中
そりゃあ、城の警備が重要なのはわかるよ?もしこれが曲者が侵入してきそうな門とか城壁とかならちょっとはやる気出るけどさ〜


「なんで厨房前なんだよ…」


こんなとこ来る馬鹿居る?毒盛るとしても此処で作られるご飯は城で働いてる人たちが食べる分だけで、家康様暗殺するなら此処とは逆にある厨房に毒盛らなくちゃ意味無いし。


「なんでって…会議で頭領が話してるのお前も聞いてたじゃんか」

「ああ、あの時寝てたから聞いてない」

「は?いやいや、お前話聞きながら頷いてただろ?頭領にわかったかって聞かれた時返事もしてたし…」

「フッ、甘いな辰吉。私はあんたと違って日々進化しているのさ。今まで会議中に居眠りして何度頭領に拳骨をもらったことか…そこで私は目を開けたまま寝るという奥義を習得したのだ!稲を騙…手伝ってもらって寝ているときに声をかけられたら頷いたり返事をしたりという技も身に付けた私にとって頭領などもはや恐るるに値せず!」

「それはどちらかというと退化なんじゃないか?頭領にバレたら拳骨じゃすまないぞ;」

「拳骨じゃすまないって何されるんだろ?逆さ吊りとか、堀に突き落とされるとか……今のところ辰吉にしか言ってないから頭領にバレたらあんたも道連れね☆」

「なんでだよ!?…ホントなんでお前みたいなやつが頭領の右腕なんだ……」

「実力でしょ?私より強い奴が居ないからいけないんだよ。」


小さいころから父さんに剣術習ってたからな〜、忍術は父さんじゃなくて別に先生がいたけど…


「一葉さん直々に修行してもらえるなんて羨ましい…そういやお前って戦闘専門の忍だろ。情報収集の修行は受けたのか?」

「一通りはね。でも私には合わなかったよ」

「ふ〜ん。あ、じゃあ“あれ”とかも教わったのか?」

「“あれ”?」

「くの一は情報収集で色香を使うだろ。ぜんっぜん色気感じないお前も修行受けたのかな〜っと…あとは、まあ、性技とか//?」

「女性にそんなこと聞くとは辰吉君はホントに品がありませんね〜。世の女性のために私がここでぶっ殺してあげようか?」

「ごめんなさい!刀しまってください!!」


刀をスラリと抜くと高速で土下座する辰吉。


「色気ないとかほざいた奴の言葉を私が聞くとでも?」

「すいませんでした!式様には色気があります!」

「……なんかむかつくからやめろ」

「じゃあどうしろと…」

「鈴虫堂の新作大福ってすっごくおいしんだよね〜、いっつも売り切れだし…二十個くらい食べたいな〜」

「二十!?…わ、わかった!明日買ってくる」

「よし、許してしんぜよう」

「うぅ…で、どうなんだ?」

「…あんたも結構しつこいな〜。それを習う前に忍術の先生が謎の人物に半殺されたから受けてない」

「謎の人物?」

「うん、癖のある長髪に無精髭の男だったらしいよ。あ、左腕に傷跡があったとか」

「…それって一葉さ「それ以上言ったら謎の人物に暗殺されるよ」だ、誰だろうな〜」


世の中には知らないほうが良い事もあるのさ!


「話は戻るけど、なんでここで警備するの?」

「かなり戻るな。まあいいか…最近朝になると菓子が減ってるらしいんだ」

「その犯人を捕まえろと?」

「いや、家康様が寝ぼけて食べてるらしい。健康に悪いから止めろだとさ」

「それ医者に相談したほうが良いんじゃない?」


大丈夫か家康様!?
てかそんなくだらないことで睡魔と闘いながら警備するなんて…


「おい、何処行くんだよ?」


辰吉に背を向けて歩き出したら止められた。


「詰所。もう寝る」

「いやいや、仕事は?」

「あんた一人で大丈夫でしょ?それにあと一刻も経たないうちに交代だから詰所で仮眠取る。明日大福持ってこなかったら石括りつけて堀に沈めるからそのつもりで〜」

「ひでぇ!鬼!」

「がんば〜」


ぎゃーぎゃー騒ぐ辰吉を放置してのんびり詰所に向かう。
あ〜眠い眠い…



*****



「あれ?誰も居ない」


暗闇の中詰所に戻ったが室内は空っぽ。

普通二三人居るのになぁ
まあ良いや。早く寝よーっと。

仮眠室の扉をガラリと開けると中は更に真っ暗。

燭台一つくらい付けとけよ。暗すぎて見えないじゃん!


「とりあえず布団出さないと……ぐ、月明かりが入らないから全然見えない。火遁で火を起こすか?でも私が火遁やると小さな火花が出るか大爆発が起きるかなんだよな〜。詰所吹っ飛ばしたら説教じゃすまないだろうし…」


確か此方に押し入れが…

暗闇を手探りで前に進んで行くがなかなかたどり着かない。


「おかしいな〜、もう少し先にウギャッ!」

「ぐ…」


うぅ、何かに躓いて思いっきり転けた。しかも目指していた押し入れに顔面衝突。鼻がジンジンしてちょっと涙目になる。
ん?転けた拍子に躓いたものに全体重掛けて膝をついたら何か声が聞こえた。
微妙に柔らかい何かのおかげで膝を怪我せずにすんだけど、まさかこれ生き物?


「誰か居る?人間?」

「うぐ………」


どうやら膝が鳩尾に直撃したらしく、悶えている某さん。急いでその人の上から退き、話しかける。


「えっと…大丈夫?」

「………」


何も言わなくなったよ。やっべ〜、怒ってるかな?頭領に告げ口されたらお説教されるかも;


「おーい、生きてる?死んだ?」

「……勝手に殺すな」


暗闇の中、その人の身体をツンツン突っつくと今一番聞きたくなかった声が返ってきた。


「ととと、頭領!!?」

「俺の寝首を掻こうとは良い度胸をしているな…」

「ごご誤解です!!転んだだけで…」


最悪だー!選りによって頭領だったとは!!
暗くてよくわからないけど怒ってる気配がする!……殺される?


「ごめんなさい!命だけは助けてください!!」


高速で土下座をする。ああ、さっきの辰吉の気持ちが嫌なほどよくわかる…


「…警備はどうした」

「交代しました!」

「…いい加減頭を上げろ」


どうやら頭領には私の姿が見えているらしく、少し呆れたようにそう言われた。

この暗さで見えるなんて…猫か梟ですかあなたは。


「す、すいません…」

「…もう良い。仮眠か?」

「はい」

「………」


何?永遠の眠りにつかせてやろうとか!?

そんなことを考えていると腕を掴まれた。





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