今日は晴天なり

□現実?幻覚?
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此処は名も無き山の奥深くにある傭兵、式が住む屋敷。
いつも通り押しかけ、部屋に居座る我の名は風魔小太郎。
我が式の屋敷に着くと、狸の犬である半蔵が先に来ていた。
ああ、半蔵とは犬のくせに我の式を狙う不届きな犬だ。

普段なら我の姿を見た半蔵がおこがましくも式を我から奪おうと、咬み付いてくるのだが……

これは一体何だ?


「…式」

「何?半蔵」


我の目の前で後ろから半蔵に式が抱きしめられている。

傍目から見るとまるで恋人同士のようだ。


「…ありえない」


思わずそう呟き、目の前の光景をぼんやり見つめる。

幻術は我の十八番だと思っていたが、半蔵に奪われたか?
それとも妖術を使う式の悪戯か?

兎に角これが現実のはずがない。
もしもこれが現実なら…

ゆっくりと立ち上がり、半蔵に向かってクナイを投げる。
それを避け、式から離れた半蔵に代わり、式を後ろから抱きしめる。


「…………」

「やはり幻術…ガフッ!」


幻術ついでに無言の式の胸を手で揉…もうと思ったが、相変わらずのまな板よな。凹凸がほとんどない。

一人納得していると、突然飛んできた式の裏拳が顎に直撃。畳み掛けて来た側頭部への回し蹴りと後頭部への踵落としに地面へと突っ伏す。


「何しやがんだこのド変態がああ!!」

「ぐう…ククク、予想通りの展開よ。まさかこれが現実とは……」


地に伏せたままそう呟き、近づく足音に顔を上げる。
すると、式の横に立った半蔵が我を見下していた。


「フッ、無様…」

「……式に何をした」


よろよろと立ち上がり半蔵を睨みつける。


「何も…」

「嘘を言うな。式が我を拒絶しうぬを受け入れるなどありえぬ」

「では己の目で確かめろ。…式」


そう言い、半蔵は式を抱き寄せた。

式を抱きしめた半蔵に鉄拳が………飛んでこない…


「どういうことだ」

「…見ての通りだ」

「見てわからぬから聞いている」


ニヤリと笑う半蔵を睨み、視線を式に移す。


「…式は俺のものということだ。そうだろう?」

「そーですねー」


遠い目をした式が半蔵の言葉にそう答えた。


「半蔵。式に何か盛りおったな?」

「…何も」

「半蔵。抱きしめるのは良いけどその手は何?」


式がベシリと尻を撫でる半蔵の手を叩いた。


「…このくらい良かろう」

「駄目」


おかしすぎる。いつもの式なら半蔵は疾うの昔にボロ雑巾と化しているはずだ。
今日の式は半蔵に甘すぎる。現に手を叩かれてすぐに式の胸に手を当てている半蔵を抓る以上のことはしない。


「フッ、不思議そうな面をしているな。はっきり言おう。式は俺のものだ。貴様は失せろ」

「黙れ。式がうぬのような変態に靡くはずがない。うぬを壊し、式を正気に戻す」


我は闇御津派を構えるが、半蔵は式を抱きしめたまま動こうとはしない。


「勝負は明日にしろ。今日は忙しい」


半蔵は式の髪を一房掬い、口付けながらそう言った。

今すぐその腕を切り落としてやろう…

半蔵に飛びかかる寸前、式が振り返り半蔵の腕を掴んだ。

そのまま殺してしまえ。


「半蔵。僕の事好き?」

「…無論」

「じゃあ、小太郎を倒してそれを証明してよ」

「……わかった」


半蔵は式の頬に口付けし、渋々我に向かって闇牙黄泉津を構える。


「壊してやろう…原型を留めぬほどにな!」

「…滅」

「屋敷が壊れるから外でやってきてよ」


プラプラと手を振る式から視線を外し、森の中へ移動した。




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