今日は晴天なり
□魔王と教師と生徒と
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授業中、突然鳴った放送に呼び出されたくのいちは放送室に向かっていた。
堂々と授業サボれるなんてラッキ〜♪
式ちんがどっか行ってて暇だったんだよね〜
にしても半蔵の旦那と風魔の旦那あたしに何の用だろ?
そんなことを考えながらのんびり歩き、辿り着いた放送室の扉をノックする。
すると、すぐにガラリと開いた扉。
そこに立っていたのは紺のタートルネックに黒いパンツ、黒髪を高く結い、顔の右目と鼻に傷がある目付きの悪い男。
見た目はやの付く職業っぽいが立派な教師、古典教師の服部半蔵である。
「……遅い」
「呼び出しておいてその言い方は酷くないっスか?」
「…来い」
軽口を叩くが無視し、背を向け部屋に入る半蔵にくのいちは軽く肩を竦めながらその後について入る。
「クク…来たか」
「意外な組み合わせっスね」
「………」
嗤う声とくのいちの言葉に半蔵は眉間に皺を寄せ、イスに座り足を放送機械台に乗せ、偉そうにふんぞり返りニヤニヤと嗤う男を睨みつけた。
灰色のカッターシャツにジーパン、編みこまれた長い赤毛を高く結った顔色が悪く、青い隈どりにアイスブルーの瞳の大男。
ヤクザだなんだという以前に人間なのか怪しい(本人曰く、混沌の風)数学教師の風魔小太郎。
くのいちがこの取り合わせを見て意外と言ったのは、小太郎と半蔵がこの学校『無双学園』の教師・生徒なら誰でも知ってるほど仲が悪いからだ。(正確には小太郎に事あるごとにからかわれたり喧嘩を売られるので半蔵が警戒し嫌っている)
「で、あたしに何の用ですか?」
「話す前にうぬに見せたいものがある。…半蔵」
「………」
小太郎の言葉に無言で頷いた半蔵は空いているイスに乗り、天井の一角を押し上げた。
すると正方形の板が外れ、人が一人やっと通れそうな穴が現れた。
「何これ?てか教師が学校壊して良いの?」
「…ついて来い」
そう言ってスルリと天井に消えた半蔵を追って上がると、薄暗い中20mほど離れた場所にある一筋の光。
その傍に懐中電灯を持った半蔵が座っていた。
「ちょっと半蔵の旦…ムグッ」
「…声を押さえろ。気取られる」
サッと口を押さえられ急いで頷くと、手を離した半蔵が懐中電灯を消し、板をずらしてそこを指差すのでくのいちはそっと覗いた。
「信長理事長〜。どう、おいしい?」
「いいぞ、よくやった」
「えへへ〜」
くのいちが覗きこむと其処には高級そうな黒いソファーと重厚なテーブル。どうやら理事長室らしい。
理事長室では上座にあるソファーに座った無双学園理事長の織田信長と、その左のソファーに座った式が楽しそうに談笑(信長は無表情だが)している。
何やってんの式ちん!?
あの魔王・信長理事長と一緒にいるなんて…
いや、それよりもそのテーブルに並んだ大量のクッキーやケーキは何!?
信長理事長無表情でケーキ頬張ってるし…怖ッ!
「チッ…あの野郎式とケーキ食いやがって…」
「半蔵の旦那、口調変わってる;」
「クク、壊してやろう…」
「Σ風魔の旦那!?どうやって此処に入って来たんスか!?入口あたしがやっと通れるくらいだったのに…」
バキリと懐中電灯を握り潰す半蔵とニヤニヤ嗤いながら殺気立っている小太郎を引っ張ってなんとか元の放送室に戻ることができた。(小太郎はくのいちが半蔵が下に降りたのを確認し振り向くと天井から消えており、慌てて下を見ると先ほど座っていた椅子にいた)
「で、結局先生方はあたしに何させたいんっスか?」
「…わからぬか」
「クク、阿呆よな」
「酷ッ!」
呆れる半蔵と嗤う小太郎に怒ったくのいちはドアに向かう。
「待て、うぬには式の監視をしてもらう」
「なんで?」
「…貴様も見たように近頃式が頻繁に理事長に会っている」
「それが気に入らぬ故我らは信長を抹殺しようと思ってな」
「思ってなって…;でもそれじゃあべつに式ちん監視しなくても良いでしょ」
そもそもんな物騒なことにあたしを巻き込まないでよ〜と不満そうに言うくのいちを小太郎はクツクツと嗤う。
「ククク、タダとは言わぬ」
「お、もしかしてお金くれるの?」
「…否、貴様は前の学期末テストで数学と古典共に赤点だったな」
「むぐぅ、そ、それは…」
「赤点を三つ取ると留年…いくら阿呆なうぬとて知らぬわけではなかろう」
「そりゃまあ……」
「…此処まで言えばわかるな」
フッ、見くびってもらっちゃあ困るよ半蔵の旦那と風魔の旦那。いくらあたしだってね……
「氏康の日本史もつけてやろう」
「全力でやらせていただきます!!」
これでテストはバッチリ!
ん〜、でも今からあの部屋行く度胸はないにゃ〜
よし、時間を稼ごう。
「式ちんが近頃信長理事長のとこ行ってたなんてね〜。お二人は今まで何もしなかったんスか?」
「…否、気付いてから二度暗殺を実行したが失敗した」
「Σマジッスか!?こっわ〜;」
「ついでだ、うぬに説明してやろう」
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