今日は晴天なり
□風邪と風
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「げほごほぐふッ…あ"ぁ〜〜……」
「クク、色気の無い声よな」
「うっさいです…あ"ぁ〜喉痛い〜〜」
皆さんこんにちは。
医者見習いの式です。
この度久しぶりに風邪を引いてしまいました。
朝起きたら喉は痛いし頭も痛いし鼻も詰まってるしと三重苦状態。
今日は大人しく引き籠ろうと布団に潜り込んでうとうとしていると、突然剥がされ冷気に晒された身体。
熱で霞がかかった頭を押さえながら目を開けると、大きな影が布団を片手に私を見下ろしていた。
「ククク…」
「……ふ、まさん」
「……式?」
ニヤニヤ嗤っていた風魔さんは私のいつもと違う様子に怪訝そうな顔をし、屈んで私の額に手を当てた。
「…熱があるな」
「ん…」
風魔さんの手冷たくて気持ちぃ……
ベシッ!
「痛ッ!う"ぅ〜〜、なんで叩くんですか!?」
「クク、医者の不養生よな」
「医者じゃなくて見習いです。てか誰のせいで風邪引いたと思ってんですか!」
「誰だ?」
「あなたですよ!!」
「?」
「なんですかその『え?何言ってんのこいつ?』ってか、おごほッ、げほげふッ」
滅多に見れないきょとん顔を見れたのはちょっと嬉しいけど、今は殺意のほうが上回ります。
あー、殴りたい。
「殺意を向けるな。苦しいなら黙って寝ろ阿呆」
「げほッ、優しさの中に何気なく毒入れるのやめてくれませんか。阿呆はあなたです、昨日の事を忘れるなんてその若さで痴呆ですか?うっわ〜…痛いッ!」
スパーンッと先ほどより強く叩かれました。(これ一歩間違えたら風魔さんの爪とか小手とかで頭抉られるんじゃないですか?)
打撃と頭痛でぐらぐらする頭に走馬灯のように昨日の悪夢が駆け巡った。
あれ?私死ぬ?
*****
あ〜、またお金無くなりました。
なんでですかね〜?いろいろ医療関係の物を買うからですか?要するに私が悪いと……
いやいや、私は悪いわけない(と思いたい)のできっとあれです。風魔さんが家でしょっちゅうご飯食べるからです。
あれ?でも魚とか野菜とか毎回持ってきてくれるから出費はほとんど無いような…
「ぬぁああ!違う!私は悪くない!!」
「Σどうした譲ちゃん。急に叫びだして;?」
釣りを始めて早数時。まだまだ冷たい風が吹く中ピクリとも動かない糸を見飽きて、思考が明後日の方向に飛ばしていたら認めたくない結論に達しそうになった。
それを振り払うため心の中で叫び声を上げると、実際にも声が出てしまったらしく、近くで釣りをしていた見た目ガラの悪いおじさんが驚いたように私を見た。
「すすすすいません;なんか頭の中がどっかの誰かさんのせいで混沌に…!」
この場に居なくても混沌を起こすとは…風魔さん恐るべし!
あれ?なんかこのおじさん何処かで見たような気がするんですが?
う〜ん、何処でしたっけ…あの顔にある傷に見覚えがあるんですが、今の御時世傷なんて珍しくないし…
「混沌か…どっかのおばけさんみたいだな」
「おばけと知り合いなんですか!?」
「おう」
「へえ〜、私も妖怪さんと知り合いなんですよ」
おばけとか妖怪って私が知らないだけでそこらへんに居るんですかね?
あ、でも風魔さんは妖怪じゃないって言ってたような…まあ良いか。
軽く笑うおじさんに笑い返し、お互いに知ってる人外について会話を交わす。
「妖怪さんは料理がすごく上手なんですよ。それにいつもお菓子持ってきてくれて…」
「お前の知ってる妖怪は世話好きなんだな。こっちのおばけさんは性格に色々問題はあるが頼りになるぜ」
「私の妖怪さんも頼りになりますよ。遭難したり迷子になったり理由は忘れたけど忍びに襲われたりしたとき助けたくれました。あ、でもたまにからかってきたりしてちょっとムカつきます」
「そうか。そういやさっき『私は悪くない』って叫んでたな。もしかしてその妖怪にからかわれて喧嘩でもしたか?」
「いえ、喧嘩はしたこと無い…あ、一回頭握り潰されそうになりましたね。でも今回は喧嘩じゃないです」
あのときは結局何に怒ってたのかわからなかったな〜
そんなことを考えていると、ぷか〜っとのんびり煙管を吹かしていたおじさんが少し顔を引き攣らせた。
「妖怪ってのは凶暴だな。譲ちゃん大丈夫か?」
「普段は結構優しいですよ。私が作った食事とか入れたお茶で死にかけても怒られたことありませんし…」
「(どんな茶だ?妖怪より譲ちゃんのほうが怖ぇな;)そうかい。じゃあなんで叫んでたんだ?悩みがあるなら相談に乗るぜ?」
な、なんて優しいんだ!
見ず知らずの私の相談に乗ってくれるなんて…笑顔が眩しい!
これが風魔さんだったらニヤニヤしながらここぞとばかりにからかってきたり、あの尖った爪で頬っぺたをツンツンしてきたりするのに!!
風魔さんが優しいっていうのは今日を持って撤回します!!
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