今日は晴天なり

□開けてビックリ○○箱!
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〜正午、小田原城〜


天守閣からモクモクと立ち昇る煙。
その発生源を取り囲む三つの人影。


「……………」

「こ、これ何…?」

「すげぇな……」


顔を引き攣らせた氏康と甲斐姫が、無表情だが心なしか顔色がいつも以上に悪い風魔の持った箱を後ろから覗きこんでいた。



〜早朝・式宅〜


「風魔さーん!あーさでーすよーー!!」


声と共に式が風魔の寝ている布団に飛び乗った。


「うッ……重い…」

「し、失敬なッ!女に向かってなんということを……次からは鳩尾狙って飛び込みますよ!?」

「……やめろ」


ペシペシと己の身体を叩く式の手を掴み、身体を起こす。


「早くしないとお仕事遅れますよ〜、北条様に怒られますよ〜」

「少し静かにしろ」


風魔は長い赤毛を結びながら、いつも以上に騒ぐ式に、まさか朝から酒でも飲んだのか?と疑問を抱く。


「はい、これ持って行ってください」


朝食を食べる時間が無く、そのまま出ようとする風魔に式は包みを渡した。


「なんだこれは?」

「それはあとでのお楽しみ〜、正午まで開けないでくださいね。開けたら爆発する…かもしれません」


爆発物(?)を持って行けと言うのかと思うものの、何故か嬉しそうな式を見ると何も言えず、風魔は黙ってそれを受け取ると城へ向かった。


時は移り正午、天守閣に居た氏康は風魔の持っている包みを指差す。


「おい風魔。これはなんだ?」

「クク、爆弾だ」

「なッ、てめぇ危険物持ちこんでんじゃねぇぞ!」


怒鳴る氏康を無視して包みを開くと、長方形の木箱とその上に置かれた手紙が入っていた。

風魔は木箱と包みを横に置き、手紙を開く。


――――――――――――――――

風魔さんへ

ちゃんとお仕事してますか?
頑張ってくださいね!

あ、今日もうちにくるならなんかお土産買ってきてくれると嬉しいです。

それでは怪我の無いように。

式より

――――――――――――――――



「何ニヤついてんだ?もしかしてあの譲ちゃんからの恋文か〜?」

「えッ!小太郎あたしにも見せて!!」

「…煩い」


風魔は手紙に手を伸ばす甲斐姫を躱しながら氏康を睨みつけた。


「ちょっとくらい見せてくれても良いじゃない!…あ、包みにもう一枚紙が入ってるわよ?」


甲斐姫の言葉を聞いた風魔は、少し眉間に皺を寄せながら包みに手を伸ばす。




――――――――――――――――

追伸

最近巷で“弁当男子”というのが流行っているらしいので作ってみました。

私的には成功したのでたぶん大丈夫だと思います。
よかったら食べてください。

――――――――――――――――



「おい、どうした?顔色悪いぞ」


手紙に目を通した瞬間固まった風魔は氏康の問いかけに全く反応せず手紙を凝視する。

我の身を案じる張本人に命の危機に晒されるとは…
そして我の知識が正しければ“弁当男子”とやらは本人が作ってくることを言うのではないのか?

そんな考えや、今までの毒殺未遂事件が風魔の頭の中を駆け巡った。
それを頭を軽く振って振り払う。

式が成功したと言っているのだ。
悩むのは中を見てからでも遅くはない。

一度深呼吸をして、覚悟を決めると箱の蓋を持ち上げた。

モワ〜ン


「な、何!?」

「てめ、風魔!まさか本当に爆弾じゃ…!」

「違う……多分」


モクモクと箱から立ち昇る煙を振り払い、中を覗きこむ、と再び風魔は固まった。

一言で表すなら極彩色。
ありえない色どりの弁当を目の当たりにして一気に血の気が引いていく。

まず、おにぎりが青い。
何をどうしたらこのような色になるのか全く理解できない。したくもない。
この時点で食欲が消え去った。
次に、卵焼きが緑。
貴重な卵になんということを…
いったい何を混ぜたんだ。
気のせいか悪意を感じる。
最後に沢庵が紫。
…腐ってないか?
もはや殺意しか感じない。

弁当を覗きこんで騒いでいた氏康と甲斐姫は、突然立ち上がった風魔に驚く。
風魔が天井を見た瞬間、そこから一人の忍が降り立った。


「ちょッ、小太郎?」

「お前まさかそれを部下に始末させようとしてるんじゃ…」

「…今すぐありったけの薬と解毒剤を持ってこい」

「はッ」


シャッと消えた忍を見送る風魔は弁当を包み、外に向かって歩き出した。


「待て待て、薬と解毒剤ってお前それ食う気か;?」

「い、いくらあんたでもそれはちょっとヤバいんじゃ…;」

「…………暫く暇を貰う」


それだけ言うと風魔は空気に解けるようにその場から消え去った。




愛妻(?)弁当いりますか?


あッ、風魔さんいらっしゃーい
あれ、なんかすごいやつれてませんか?

……気のせいだ…
これを…

おおッ、弁当箱!
空っぽ!?まさか捨てて…

ちゃんと食べた…

ほ、ほんとですか!
嬉しいなぁ〜//
ちょっと失敗しちゃったから残すと思ってたのに…//

(ちょっと…?)
そ、そうか…

よしッ、次は頑張ろう!

ッ!?
し、食事は我が作るからうぬはゆっくり寝ていろ
薬の調合と医術の勉強で疲れているだろう

そうですか?
う〜ん、確かに私がご飯作ると料理器具が使用不能になるし……じゃあ、お言葉に甘えて…

ああ…

じゃあ、私弁当箱片付けてきますね

……式、そのおかしな面はなんだ?

これですか?
ガスマスクっていって、毒を吸わないようにする道具です

…何故それを着ける?

いや〜、この弁当箱もう使えないから焼却処分にしようと思うんですが、燃やすとなんかヤバい気体が発生するので…

………具合が優れないから横になる…
(我はその元になるものを食ったのか…)




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