今日は晴天なり
□モーニングコール
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会社帰り、珍しく風魔さんからお誘いを受けました。
お腹空いたな〜焼き鳥食べたいな〜とか思いながらルンルン気分で風魔さんの跡を追っていくと、たどり着いたのは何故か小洒落たレストラン。
ええーーッ!?
とか驚いて固まっていると腕を引っ張られて入店。
混乱したまま美味しいご飯を食べてワインを飲んで「うわ、金ヤバいですよこれ只でさえ金欠なのにどうしようそうだ食い逃げしよう……」とかブツブツ言ってるといつの間にか会計が済まされていた。
うっわ〜、怖いよ氏康社長〜
誰これ?風魔さんの皮被った誰これ?
もしや実は風魔さんって双子で、この人は小太郎さんじゃなくて大太郎さんとか……ブハッ!
駄目だ…想像したら腹が……ッ!
……落ち着け私、そもそもあんな個性的な人が二人も存在したら滅茶苦茶恐いです。
まあ、きっと風魔さんお得意の気まぐれでしょう。
絶対そうだ。
酔ってフワフワする頭でそう結論付け、ご機嫌で道を歩く。
「…式」
「はいは〜い。なんですか〜」
私から少し離れた後ろを歩いていた風魔さんに声を掛けられ、振りかえる。
でも何となく止まりたくなかったのでバックしながらトテトテ道を進んでいると風魔さんに腕を掴まれた。
おお、捕まってしまいましたよ〜
走ってないのによく追いつきましたねぇ
あれですか、コンパスの違いですか?
要するに私の足が短いって?
んなわけねぇですよ!風魔さんが異常なだけです!
ついでにこの人手も長いんです。
断じて私の足が短いわけではない!と信じたい!!
そんなどうでもいいことを考えている酔っ払いの私とは違い、風魔さんの表情は真剣。
どうしたんですかと言おうとした瞬間耳に届いた言葉。
「付き合ってほしい」
「…………ああ、は〜い、わっかりました〜、何処行くんですか〜?」
「………………………混沌…」
こんとん?何処ですかそれ?
あ、もしかして香港?
*****
ピロリロリ〜ン♪
「ふおッ!?」
耳元で聞こえた携帯の着信音に驚いて目を覚ますと見慣れた私の部屋。
「ふぁ〜あ……夢ですか〜」
いや、正確には現実にあったことなんですけどね。
半年前風魔さんに告白されて現在恋人なんですけど……
「うん…できればテイク2撮って欲しい…」
ある意味私の黒歴史です。
記憶に鍵掛けるか捏造したいんですが、偶に見るんですよねこの夢……
ああッ!軽い自己嫌悪が!!
ベッドの中でギュォォオオ!とかわけわかんない声出しながら悶える。
もう嫌だ〜、私は貝になりたい〜
………はいッ!自己嫌悪終了!!
何事もメリハリをつけないとね☆
そうだ、メールが来てたんですよ!
えーっと、今の時間は〜六時!?
今日休日だぞこのヤロ〜、貴重な睡眠時間返せ〜
悪態を吐きながらメールを開く。
―――――――――――――
From 風魔さん
件名 起きろ
本文
今すぐ我の家に来い
―――――――――――――
パタン
携帯を閉じて布団に潜り込む。
俺様ならぬ我様なメールなんて見てません。記憶から消去!
次は良い夢みたいな〜
いや、自己嫌悪に陥るようなやつじゃなきゃなんでも良いや〜
おれは海賊王になる!的な夢でも良いや〜
ピロリロリロリロ♪
夢の中であの“正義”って書かれた正直ちょっと痛いコートはどうやって肩についてるんだ見せろゴラァと暴れていると、突然鳴り響いた電子音に再び覚醒。
珍しく期待通り(?)の夢が見れたのに何故海軍?
どうせなら主人公のとこ行かせろよ私の脳みそ…
くだらないことを考えてる今も鳴りやまない携帯を、睡眠を妨害された苛立ちを抱えながら開くと画面に『風魔さん』の文字。
ピッ
電源ボタンを押すと耳障りな電子音が消えた。
ついでにボタン長押しで、我が親父殿から送られてきたどうやったらそんな至近距離で撮影できたのか謎な野生のベンガルトラの待ち受けをシャットダウン。
次こそはピンク帽子のトナカイをモッフモッフしてやると意気込みながら布団を被る。
ピンポーン♪
「………………」
ピンポーン♪
「………………」
ピポピポピポピポピポピポピンポーン♪
イラッ
……意地でも出んぞ……
カチャカチャカチャガチャンッ
ギーーッ
Σ開いた!?
フローリングを歩く音が接近してきて寝室の前でピタリと止まった。
スーッと扉が開き、雨戸を閉めて真っ暗だった部屋に明りが入る。
なんか来ましたよ。不法侵入ですよ。
よんでませんよ、風魔さん。
よし、狸寝入りしよう。
「ククク、バレているぞ、式」
…ですよね〜
「メールを送ったはずだが、何故来ない?」
当たり前でしょ、面倒だしたるいし眠いし眠いし眠いし寝たいし…
「いい加減起きろ」
「……………」
「ほう、起きぬか…覚悟は出来て「おはようございます!!いや〜良い朝ですねーはっはっは!」
あっぶなッ!なんか我が身の危機を感じましたよ!?
ガバリと布団から勢いよく起き上がるとベッドの隅に腰かけ、ニヤニヤ嗤う風魔さんと目が合った。
「うう〜、まだ七時なのに…風魔さん早起きすぎですよ。爺かあんたは」
「うぬが早く寝ぬのが悪い」
「せっかくの休みなのに…ハア、変な夢見るし散々な休日です」
「夢?」
「はい、風魔さんに告白された日の夢見ました」
「ああ、あれか」
少し遠い目をする風魔さんの隣に移動する。
「まさかあんなベタな返しをされるとは思わなかった」
「いや、私も一瞬『えッ、告白!?』と思いましたけど『いやいやそんなわけないか』と冷静に分析した結果あの返事になったんですよ」
あの時の風魔さんの苦虫を百匹噛み潰したような顔は多分生涯忘れません。
苦い表情通り越して凶悪面になってましたからね〜
軽いトラウマです。
でも…だって風魔さんですよ?
風魔さんが告白ってねぇ……
「明日は槍どころか手榴弾くらい振ってきそうだな〜って思いました」
「うぬはつくづく失礼な女よ…」
「ふっへっへ〜」
呆れたようにため息を吐く風魔さんをからかうように笑うと右の瞼にキスをされた。
二度寝三度寝
そういえばメールしたり電話したり…何かご用ですか?
………行きたいと言っていただろう
そ、それは九景島シーパラダイスのチケット!?
わーい!
ってことはデートですか?
…まぁ………そうだ…
それならそうとメールに書いてくれれば良いのに〜
楽しみだな〜、深海魚いるかな〜
イルカやペンギンではないのか?
そっちよりも深海魚とかなんか変な魚のほうが好きです
あのフォルムがたまらん!
本当にうぬは可笑しな奴よな…
何をいまさら…!