只今曇天につき

□その死神、初見
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「ドクターーーーー!!!」


スピアーズ先輩と資料を持ちながら廊下を歩いていると、突然聞こえてきた聞き覚えのある叫び声に振り返る。
黒服ばかりの死神派遣協会でかなり目立つ赤いコートを羽織ったサトクリフ先輩が、これもかなり目立つ白い白衣を羽織ったドクターことネムさんに飛びかかっている姿が目に映った。

ゴッッ!!

鈍い音が廊下に響く。
宙を舞うサトクリフ先輩はドクターに到達する寸前、デスサイズでぶん殴られ床に沈んだ。


「キミはもう少し慎みを持つべきだ。紳士としても淑女としても落第だねぇ」


笑顔でそう言い捨て、こちらへと歩いてくるドクターに廊下の真ん中で突っ立ってその様子を見ていた俺は慌てて道を譲り、白衣を翻して歩く後ろ姿を見送る。

いったいどうしたんだ、先輩は。スピアーズ先輩に殴られすぎて遂に頭が可笑しくなったのか。
だってあのサトクリフ先輩が、自他共に認めるイケメン大好きなサトクリフ先輩が乙女モード全開でドクターにアタックしてんの!マジありえねぇ!!
いや、確かにドクターは道ですれ違ったら全員が振り向くくらいの美人だけど……ドクターれっきとした女性だからね!!


「スピアーズ先輩、サトクリフ先輩が遂に壊れたみたいっスよ」

「グレル・サトクリフは前からああです。まったく、あれが医療課に行く度に私に回収を依頼する電話が掛ってくる。仕事を邪魔されるうえにあれの保護者と見られているようで不快です」

「へえ、そんな前からなんスか。にしてもオカマなのに何で女のドクターに惚れてるんですかね?」

「……おそらくあの時のことが原因でしょう」

「知ってるんスか!?教えてくださいよ、いったいあの二人に何が…」

「そんなことより、さっさと仕事に戻りますよ。このままでは今日も残業だ…」

「ええッ!意味深なこと言っておいてそりゃ無いっしょ!」

「……ロナルド・ノックス、そんなに残業したいのですか?」

「い、いや、それはマジ勘弁っス;」


その場はスピアーズ先輩に脅されて渋々仕事に戻った俺だったが、どうしても気になる。
回収班の奴らに聞くと、サトクリフ先輩がドクターを追っかけまわしているのは『死神派遣協会七不思議』(そんなのあんのかよ)の一つらしい。

これは是非知っておきたい。
合コンで話題にもできる。
そう思い早速サトクリフ先輩に聞こうとオフィスへ向かったが先輩は不在。
残っている奴に居場所を聞くと『ドクターーー!!』と叫びながら出ていったので恐らく医療課にあるドクターのオフィスに居るだろうとのこと。

仕事中何してんだあの死神。またスピアーズ先輩に殴られんだろうな〜
わかってやってんのか、学習能力が欠如してんのか…

いや、でもこれは絶好のチャンス!
直接話し聞きに行くならドクターとサトクリフ先輩が一緒にいる今しかないっしょ!
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