只今曇天につき

□その死神、優婉
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がやがやと煩い店内に遅れて到着すると、先に来ていた奴らに文句を言われた。
そいつらに適当に謝りながら背後の扉に意識を向けてニヤケそうになる顔を必死に押さえる。



「遅れたお詫びって言い方可笑しいけど今日は凄いゲストに来てもらってまーす。どうぞ!」



俺の声と共に開いた扉から入ってきた人物に、店内の男共だけではなく女の子達も色めき立った。



「はじめまして、ネムです。急にお邪魔しちゃってごめんね」



美しく微笑むネムさんに顔を赤らめた男共を見てほくそ笑む。


さっすがドクター、予想以上の反応だ。
しつこく誘った甲斐があった。


ネムさんに椅子を勧め、固まっている奴らを軽く小突いて座らせた。



「んじゃ、改めてカンパーイ!」



酒を飲んで女の子と話しながら、男共に話しかけられているネムさんを横目で見ていると、突然背筋に悪寒が走った。


な、なんだ!?この突き刺さる視線と殺気は…!!


どす黒いオーラのする方向に視線をやるが特に何もない。
気のせいかと顔を戻しかけたが、一瞬視界に入った色に気付いて高速でもう一度そこを見た。

じっと目を凝らして窓を凝視すると、少しだけ見える赤。

どうかしたの?と聞く女の子に引き攣った笑いを送ってダッシュで外に出た。

さっきの窓に面した道手前の角まで走り、スピードを落としてそろりと覗きこむ。



「…あんの男…気安くネムに近付くんじゃないワヨ!あッ、何触ってんのヨ!」



窓にしがみ付いてブツブツ呟く赤い死神。
握りしめた鉄格子がひん曲がっている。


やっぱ見間違えじゃなかった!
何やってんだ先輩は!


顔を引き攣らせながらサトクリフ先輩に近付いて肩を叩く。



「ッ!?なッ、ロナルド!?」

「……何してるんスか先輩…?」

「何って…あんたがネムをこんな所に連れてきたせいでしょ!」

「逆ギレしないでくださいよ。つーかやってることストーカーじゃないッスか」

「うっさいワネ!そうだ、調度良いワ。アタシも混ぜなさいヨ。ネムに近付く奴片っ端から追っ払ってやる…」

「ええッ!嫌ッス……わかったんでそのデスサイズしまってください」



首筋にデスサイズを突き付けられ、両手を上げた。

ああ、これで今日の合コンは終わったな…

空笑いをしながら後ろからついてくる殺気立った先輩と共に店内に戻る。


お、うちの席やけに盛り上がってるな。
でも今から絶対盛り下がる。
皆マジごめん。
…あれ?なんか様子が……



「――で、そいつホント酷いんですよ!」

「キミにそんなことするなんて信じられない男だねぇ。こんな可愛いくて良い子を裏切るなんて…自分で良かったらいつでも話を聞くよ」

「ッ、あ、ありがとうございます!」

「ふふふ、そうやって笑うともっと可愛いね」

「そ、そうですか?」

「ネムさんってやっぱり恋人いるんですか?」

「ネムさん」

「ネムさん」

―――



顔を赤らめながらネムさんの周りに集まって話をする女の子達。
彼女達に流し眼を送るネムさんが俺とサトクリフ先輩に気付いてニコリと笑い、再び女の子達との会話を再開させた。



「……何この状況…?」

「何処行ってたんだよロナルド。いや〜、女の子皆ネムさんに持ってかれちゃったよ」



流石ネムさんだよな〜と言いながら少し哀しそうに笑う男を呆然としながら見ていたが、突然上がった怒声に驚いてネムさんが居る場所に視線を戻すと……



「アンタ達何アタシのネムに色目使ってんのヨ!!」



隣に居たはずのサトクリフ先輩が怒鳴りこんでいた。




軽く眩暈がする




大変なことになっちゃったねぇ

うわッ、ネムさんいつの間に!?
つーかなんで女の子口説いてたんですか?

ん?口説いてないよ?
思ったこと言っただけなんだけど…

うっわマジッスか?
恐ろしい……

いいアンタ達!
ネムにはアタシという恋人がいるんだから手出すんじゃないワヨ!!

……なんかあっち滅茶苦茶になってますね

相変わらずだねグレル君は…

止めなくていいんスか?

うん、近付いたら飛び火しそうだし

ほっといたら変な噂立つかもしれませんよ

今更それはないでしょ
そうなったらなったで面白そうだしねぇ

そうッスか
わッ、こっち来た!

ロナルドーー!
アンタ何ネムと二人でこそこそ話してんのヨー!!




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