昨今の積雪など

□猫と首折り、時々鯨
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最近仕事が忙しいのか二週間ほど行方不明になっていた鯨さんから突然電話があり、珍しく外で会うことになった。

これってもしかしてデート!?とか少し浮かれながら、普段のツナギやジーンズではなく、さり気なくおしゃれをしようかな〜とクローゼットを引っ掻きまわすがパーカーコレクションとツナギ、シャツなどしかない。


ああ駄目だな私。少しくらい何かデートっぽい服ないのかよ…


溜息を吐きながら散らばった服を畳んでいると、クローゼットの奥の奥更にその隅に謎の巨大紙袋発見。

こんなの買った覚えないぞ?ああ、たしか誰かに貰ったんだった。
えーっと…そうだ、仕事で知り合ったスズメバチちゃんが「青猫姉様も偶には可愛らしいお洋服をお召しになって」とか言って送って来たんだっけ。
嫌な予感しかしなくて今まで開けてなかったけど……

まあ、試しに…とパンドラバッグを開けてみる。


はい、予想通り!!
フリッフリのロリータとゴスロリが出てきました。
おいおいスズメバチちゃん…これを私に着ろって?
公開処刑以外の何物でもないでしょうが!


フリフリ服を丁寧に畳んで袋に戻そうとした時、一番底からチェックのスカートと白いモコモコパーカーが出てきた。


おおッ、なかなか良いじゃないか!
さてはあのフリフリはウケ狙いでこっちが本命だったんだな!


ルンルン気分でそれを着てニーハイとブーツを履き、待ち合わせ場所である新宿の公園へ向かうため、最寄りの駅へと向かった。



*****



「あ…」



調度停車していた電車に飛び乗り、少し混んだ車内をなんとなしに眺めていると、見知った人物が居た。
思わず漏れてしまった声に不味いと思い、慌てて顔をその人物から逸らし、流れる景色を見る。


なんで此処に居るかなぁ。いや別に居ても良いけど。
そうだよ、何も問題ないじゃないか。
何を慌ててるんだか…
それにあっちも私に気付いているとは限らないし、仮に気付いていたからといって何かあるわけじゃないし。


電車が速度を落としたため降りる人々の邪魔にならないよう端による。
うんうんと勝手に自己完結し、外に向けていた顔を正面に戻すと、目の前にボーダーのシャツと白のファーが付いたセミロングミリタリーコート。
胸板に向いていた視線をゆっくり上げるとその人物と目が合った。



「ど、どうも…」

「ああ、久しぶり。珍しい格好をしているな」



其処は触れないでくれと小声で言う。

いつの間に目の前に移動したんだ!?
仕事以外で業界の人間と会いたくないだろ普通。
なのになんでわざわざ近付いてくるかなぁ!

引き攣った笑みを浮かべながら目の前の男、殺し屋『首折り男』こと大藪さんを見上げる。



「誰かと待ち合わせか?」

「いや、そうじゃないけど…ちょっと買い物でもしようかな〜ってね」



私みたいな完全中立な立場の掃除屋は兎も角、同じ殺し屋である鯨さんのことを大藪さんに知られるのは不味いだろう。

どうやってこの場を切り抜けようか云々考えていると、電車がホームに停まった。

身体をドアに向けた大藪さんはどうやらこの駅で降りるらしいことに安心し、じゃあまた仕事あったら連絡してよと言おうとした。
が、ドアが開いた瞬間、大藪さんに手を掴まれ人波と共に下車してしまったではないか!
此処新宿じゃないのに!!



「ちょッ、私此処で降りるつもりないんだけど!」

「暇なら付き合ってくれ」



大藪さんと手を繋いだ状態で外に出て、そのままどんどん駅から離れてしまい焦る。

不味いって!これから鯨さんと会うってのに…ドタキャンとかしたらあの人絶対拗ねる!



「あのさ…さっきのは嘘で実はこれからデートなんだけど…」

「ああ、気付いていた」

「………は?」

「だがお前がそれを否定したから連れて行っても構わない思ってな」



ポカンとした私にフッと笑いかける大藪さん。
いや、そんな爽やかな笑顔向けられても困る。



「じ、じゃあ、私はこれから待ち合わせがあるんでこの辺で…」

「今から行っても間に合わないんじゃないか?」

「それはもう確実に…あと五分しかないし」

「なら断れば良い。相手には急用が入ったと連絡を入れれば問題はないだろう」

「いやいやいや問題大有……なわけないよね!すぐメールするからちょっと待ってて!!」



私と繋いでいるのとは逆の手がゴキンと鳴らされ、慌てて携帯を取り出し鯨さんにメールを打つ。

この人『誰かの役に立ちたい病』だってロン毛アゴ髭マネが言ってなかったか?
絶対『誰かの邪魔をしたい病』の間違えだろ。
人のデートをなんだと思ってるんだ……!

てかその手を『ゴキンッ』って鳴らすのマジでやめて!
脅し以外の何物でもないから!「断ったら殺すぞ」っていう副音声が聞こえすぎて泣きそうになるから!!
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