昨今の積雪など

□猫と鯨、依頼とお願い
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今日の夕飯何にしようかな〜
昨日は秋刀魚だったっけ。
じゃあ久しぶりに肉にしようかな〜


こんな暢気な事を考えながら遠くで聞こえる怒声を聞き流しつつ、背中を壁に着けて座り込んでいる私は絶賛ピンチ中。



こんなピンチいつぶりだろう?
あれは確か掃除屋になりたての頃だからもう五年以上前か…
そういやあの時に槿さんと初めて会ったんだっけ。



ボーっとした頭でそんな事を考える。

腕から流れる血は止血しているはずなのにコンクリートの地面を赤く汚していく。



いつも通りだった。

仕事の依頼を受け、この廃墟で掃除をして、相手に終了を告げた瞬間に入って来た三人の殺し屋以外は…

なんでも私が前に掃除をした死体と依頼主について聞きたいらしい。


しかし、私もプロだ。


依頼人の情報なんて言えるわけないと言ったら殺し屋達が襲いかかって来た。

そいつらはそんなに強くなかったので余裕で全員モップで殴りとばし気絶させた。
自分で言うのもなんだが私は結構強い。


とりあえずアホ上司に報告をしようと携帯をいじっていると、突然破裂音が聞こえ腕が熱くなった。

即座にその場から飛び退くと二発の銃弾が地面にめり込んだ。

角に転がり込む瞬間に見えた銃を持った人物は仕事の依頼人だった。


まあ、そんなことだろうと思ったけど、やはりあの殺し屋達は依頼人が雇ったらしい。

そのまま廃墟の中を逃げ回っていると、いつから待機していたのか奴らの仲間らしき男と何度か鉢合わせし、その度に倒して逃げ続けたが、そろそろ体力も限界。

出血が思ったより多かったのか、頭がふらふらする。





どうしようか…
死ぬ気はさらさらないと言っても、私一人でこの状況をどうにか出来るとは思えない。

今更鎌足さんに電話を掛けて戦闘能力が無い彼に助けを求めても無駄だろうし…


逃げるにも此処5階だから飛び降りたら死ぬ。

私死んだら冷蔵庫が空っぽの状態なので鯨さんが飢えてしまうではないか。

拾ったからには最後まで面倒を見ましょう。
これペットを飼った時の最低条件です。
…いや鯨さんペットじゃないし、同居人だし……


ああ、そうだ。


ポケットから携帯を取り出し、番号を表示して掛ける。

暫くコール音が続き、それが途絶えると聞きなれた低い声が聞こえた。



『青猫か?』

「うん。鯨さん今暇?」

『ああ。…声に覇気が無いようだが何かあったのか?』

「まあね〜。それで、暇ならちょっと依頼したいんだけど…」

『依頼?』

「今猫田市の廃墟に居るんだけど、いろいろあって怪我して動けないんだ。たぶん相手は五・六人程度だと思うんだけど…って鯨さん?おーい」



突然電話が切れてしまった。

暫く機械音しかしない携帯を見つめていたが、諦めてポケットにしまう。


怒声が近くなったので重い腰を上げ、屋上に続く階段を登り鎖の巻かれた扉を蹴破って出る。





いつの間にか辺りは夕陽の朱に包まれていた。


どうしよっかな〜
此処にもすぐに来るだろうし…


ボロボロになったフェンスに近付き、下を覗きこむ。

腕が無事ならそこらへんの出っ張りを使って降りれただろうけど、この状態じゃ無理だ。


倒した男から奪った銃を懐から出し、中を確認する。


弾は一発。
これじゃあ複数人来たらどうにも出来ない。
自殺しろっていう神様のお告げか?


ははははと乾いた笑いを洩らし、その場に座り込んだ。
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