昨今の積雪など

□苺と猫、間違い人違い
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「……何してんの?」



学校帰り、道の角で出会い頭にぶつかってしまった緑色でフードが蛙になっているパーカーを着た女の人に頭を下げるとそう言われた。

恐そうな人には見えなかったから警戒してなかったけど絡まれてしまったようだ。

身体がビクリと震える。



「す、すいません。よく前を見てなくて…」

「えーっと……それはギャグなの?つっこみ待ち?」

「は?い、いえ、俺は真剣に謝ってます。本当にすいませんでした」

「いやいやいや、もう良いって。何がしたいの?てかその格好何?コスプレ?」

「いえ、違いますけど…」



顔を上げて目の前の女の人を見ると、不思議そうに俺を見上げている。



「じゃあなんでそんな格好してるの?まさか趣味…?」

「いえ、俺学生なんで…」

「学生!?」

「は、はい」

「まさか大藪さんが年下だったとは……」



女の人は驚いたように目を見開き、腕を組んで唸っている。

この人今『大藪さん』って言った…?



「あの、大藪さんと知り合いなんですか?」

「…………」



未だに唸っている女の人に恐る恐る訊ねると、組んでいた腕を解いて無言で俺の肩に手を置いた。



「えッ、あ」

「病院行こう」

「………は?」



思わぬ言葉に唖然としながら女の人を見ると、同情の視線を俺に送っていた。



「知り合いに良い精神科医いるから行こう。大丈夫、私も付き添うから…」



この人完全に俺と大藪さんを間違えてる…



「すいません、俺苺原って言います。大藪さんとは別人なんです」



相手の顔を窺いながら恐る恐るそう言うと、俺の肩に手を置いたまま固まってしまった。



「………苺原…?」

「はい」



目を瞬かせながら俺の名を呟かれたのでそれに頷くと、次の瞬間目を輝かせて俺の腕を掴んだ。



「驚いたな〜、ホントにそっくりだ!」

「そ、そんなに似てますか?」



やっぱり憧れの人に似ていると言われると嬉しい。



「うん、実は生き別れた双子の兄弟とかなんじゃないかってくらい似てる」

「そうですか」



恥ずかしくなって頬を掻きながら女の人から目を逸らす。



「いや〜、でも首折りマネの言ってたことホントだったんだ」

「マネージャーさんが俺のことを?」

「うん。大藪さんをオドオドさせたような奴だって言ってたんだ。聞いた時は全然想像できなかったけど…なるほどな〜」



確かにそうだろうなと思い、大藪さんを思い出して少し笑う。

暫く女の人の質問に答えていたが、突然携帯が鳴り、それに向かって鯨がどうこうと話して電話を切ると、そろそろ行かなきゃじゃあねと言って俺に背を向けた。
だが、何かを思い出したように振り返り、俺の耳元に顔を近付けた。



「私みたいに友好的な奴ばかりとはかぎらないから、そのカチューシャあんまり取らないほうが良いよ」

「わ、わかりました」

「それじゃあね。あッ、なんかあったら此処に連絡してよ。少しくらい力になるから」



差し出された名刺には『掃除屋・青猫』と書かれていた。




遭遇、間違われた男



ありがとうございます

気にしなくて良いよ
じゃあまたね〜

はい
(青猫さんか…良い人だなぁ、大藪さんとどういう関係なんだろう?ま、まさか恋人とか!?)


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