昨今の積雪など

□猫と時計、はじめまして?
1ページ/1ページ



「ちわ〜、掃除屋『野良猫』から来た青猫でーす!」


指定されたビルの扉をバーンと開くとずらりと並んだ黒服の男達。


うわ、フリル似合わねー


あまりにも違和感があるそれを見て必死に笑いを堪える。



「約束の時間より十二分四十二秒の遅刻です」



声が聞こえた方に目をやると、黒服達が左右に分かれて並び、その奥から犬を連れた紫のロングスカートスーツのおねえさんが現れた。

黒服達とおねえさんが首に下げた懐中時計を閉じて、鋭い視線を私に向ける。
それから顔を背けて頭を掻く。



「それはごめん。ちょっと寝坊を…。ホントに…次からは注意します…はい」

「……まあ、良いでしょう。それでは仕事に移ってください」

「アイアイサ〜」



大勢+犬の鋭い視線を感じながら仕事をするのは予想以上に疲れた。



*****




「終わりましたよ〜」

「噂通りの手際の良さですね」

「いや〜、それほどでも〜」

「報酬をお渡しします。少々移動しますのでこちらにどうぞ」



照れ笑いしながらおねえさんの跡をついていくと、なにやら高級そうな外車に誘導された。


別の場所で渡すのかな?
まあ、そういうことも偶にあるし…


後部座席に乗り込んで暫く揺られていると、隣に座ったおねえさんが口を開いた。



「青猫…でしたね」

「うん、そうだよ」

「以前は失礼しました」


キョトンとしている私におねえさんが話したことによると、この前私を襲った白帽子はおねえさんの知り合いで、鯨さんに自殺させられた黒服達はそいつに頼まれて送り込んだそうだ。



「ああ、鯨さんが言ってた電話の女っておねえさんのことだったんだ」

「ええ。彼にも言いましたが、我々はあなたから手を引きます」

「へえ。なら良いよもう」



頭の後ろで腕を組んで高級な革張りの座席に体重を掛ける。

そんな私をおねえさんはじっと見ていたが、暫くして軽く息を吐いた。



「あなたは変わっていますね」

「そう?」

「はい」



ふーん。
ってあれ、なんか変人扱いされた?


いやいや私は全然普通だよ、と思っていると車が停車。

で、現在高級そうなホテルの一室の家とは比べ物にならないくらい座り心地の良いソファーに座っている。


うちのソファーって堅いんだなぁ。
なんかあそこが定位置の鯨さんに申し訳なくなってきた…


ボケーッとしていると目の前のテーブルにアタッシュケースを置かれる。

許可を得てから開くとそこには札束が入っていた。


あれ?指定の金額より少し多いような…?



「おねえさん、これ多くない?」

「お納めください。差額はあなたへの迷惑料です」

「白帽子さんのことはもう良いって…それに余計な金銭は貰わないっていうのが『野良猫』の決まりだから」


多めに入っていた札束をアタッシュケースの外にポンポンと放り出し、ケースを閉める。


そろそろお暇しようかな。
目の前に出された紅茶を飲みながらそんなことを考えていると、おねえさんが黒服達を下がらせた。



「ところで、あなたにお聞きしたいことが一つ…」

「……何?」



室内には私とおねえさんだけ。
わざわざ人払いしてまで聞きたいことって…
鯨さんのことか、それとも『野良猫』のことか。

緊張しながらおねえさんの鋭い視線を見返す。



「あなたの胸のサイズは?」



……………なんつった…?



「………はい?」

「ですから、あなたの胸のサイズはとお聞きしたんです」



いや、聞こえてたよ?聞こえてたけどさ…
人払いしてまでする質問がそれですか!?
もっと危険な話しかと思ったのに…!



「………A…」

「やはりそうですか」



やはりってなんだ!
そりゃ小さいですよ!?ええどうせ小せえよ!!
良いんだよ、鯨さん何も言わないもん!文句はないはず……だと思いたい。

べつに気にしてないし、ましてやコンプレックスなんかじゃないんだからね!!



「べ、べつに小さくても良いし…」

「気にしているんですね」

「な、何を根拠に…!」

「同じ悩みを持つ者同士、わかるものです」



目を見開いておねえさんを見る。
コクリと頷いたおねえさんと堅く握手を交わした。


互いに貧乳に関する愚痴や悩みや情報を話していると、いつの間にかすっかり日が暮れていた。


やっべ、ヒートアップしすぎた。
鯨さんに怒られる…



「そろそろ帰らないと地球最大哺乳類様に怒られるから帰るね」

「そうですか。青猫、お近づきの印にこれをどうぞ」

「わあ〜、きれいな懐中時計。ありがとう」

「いえ、それではまた…」

「うん、なんか良い情報入ったら教えてね!私も連絡するから」



コクリと頷きあい、チクタクのおねえさんと堅く握手を交わした。




遭遇、チクタク(貧乳同盟結成)



鯨さん!私の胸を小さいと思うッ!?

なんだ、帰るなり…

やっぱり巨乳が好きか!
ああどうせ私は貧乳ですよー!!

落ち着け青猫、俺は何も言っていない

そうだ
話し変わるけどそのソファー座り心地悪い?

突然だな
そうは思わないが…

あ、この時計いくらするのかわかる?
なんか高級そうなんだけど…

…話しについていけない




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ