昨今の積雪など
□猫と鯨、帽子の進物
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ソファーに座って目の前のテーブルに置かれた段ボール箱を見ながら頭を抱える。
なんなんだ一体…
もうこれホラーだよね?
ちょっと泣きそうなんだけど。
鯨さん早く帰ってきて!!
「ただいま。どうしたんだ?明りも点けずに…」
「鯨さーーーん!!!」
ナイスタイミングで帰って来た鯨さんにタックルをする勢いで抱きつく。
鯨さんは少しよろめきながらも私を抱きとめてくれた。
「うッぐぅ…ぐじらざーん!怖かったよ〜!!」
「…何があった?」
半泣きになる私に抱きつかれたまま、ソファーに移動した鯨さんの膝に乗せられた。
じっと私を見る隻眼に少し安心して、涙を拭いながらテーブルを指差す。
「これはたしか帽子卿から送られた荷物か。チクタク経由で返したんじゃなかったのか?」
「…返したよ…返したさ!なのにまた送られてきたんだよ!!返しても返しても送られてきて…これで何十往復だ!?」
*****
そう、あのあとチクタクおねえさんに頼んで荷物を帽子卿に返してもらった。
なのに次の日『野良猫』にある私のデスクの上に見覚えのある段ボールが鎮座していた。
不思議に思って鎌足さんに聞いたら
「ああ、それ今朝届いたの。前と同じで青猫ちゃん宛てだったから」
とか言いやがった。
恐る恐る開けると帽子の描かれたカードと灰色のワークキャップが入っていた。
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Dear 青猫
君以外にこの子がふさわしい人はいません
是非かぶってあげてください
From 帽子卿
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やっぱりあんたか!
いや、知らねえよ!!
てかこの子って誰?
帽子か?帽子のことか!?
震える手を必死に押さえて箱を閉じ、携帯を取りだす。
『もしも「おねえさん!また来たんだけど!!」…青猫、落ち着いてください』
コール音が切れて聞こえてきたチクタクおねえさんに悲鳴に近い声を上げた。
相変わらず冷静なご様子ですね姐御!
でも私はぜんっぜん余裕じゃないんだよ!!
「昨日送り返したはずの荷物が何故か私の目の前にあるんだけど!幻覚!?これ幻覚!!?私頭パーンッした!?」
『落ち着いてください。あなたの頭は正常です。異常なのはあの変態でしょうね。すぐに送り返す手配をします』
「うう…ありがとう…お願いします」
『いえ、それでは…』
おねえさんは仕事が速く、すぐに指定された場所で黒服さんにもう二度と来るなと怨念を込めた段ボールを渡した。
そして次の日。
「あれ?可笑しいな?すいませーん、鎌足さーん。なんか私のデスクに段ボール箱があるように見えるんでちょっと眼科行ってきまーす」
「いや、青猫ちゃんの視力に問題ないよ。俺にも見えてるから」
「おねえさん助けてーー!!」
そのまた次の日。
「あっれ〜?おっかしいな〜?ついに幻覚が見えてきたみたいだ。鎌足さーん、ちょっと精神科行ってくるわ〜」
「うん、現実を見ようね。ちゃんと存在してるよ。その段ボール」
「姐御ーー!変態がーーーー!!!」
さらにその次の日。
「……………鎌足さん…私はもう駄目みたいッスね…」
「よし、青猫ちゃん。一緒に精神科行こうか。俺も幻覚が見えるっぽい…」
「もしもしおねえさーん。なんか私末期みたいでーす」
次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も――