novel

その手を繋いで
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その日は、コエンマからの指令を伝えるため、幽助、桑原、蔵馬、そしてなぜか桑原が呼び出した雪菜と、学校帰りに居合わせた蛍子が、幽助の家に集まり、ぼたんがその言伝をしていた。


「おーっし。用件はそれだけだな?」

「ちょいと、幽助!それだけって、あんた自分の立場、ちゃんとわかってんだろうね!?」

「わーってるって。つまり、悪さしてるちっちぇー妖怪見つけたら、ぶっ飛ばせばいいんだろ?まっ、そんときゃそんときよ。それより桑原、せっかくだから、パーっと遊びにでも出ようぜ。」

「ちょっと、幽助!あんた真面目に・・」

「おっ。いいねぇ。雪菜さんも行きましょうよぉ。」

「はい!」

「もぉ、雪菜ちゃんまで・・。」

勝手に盛り上がっている幽助たちを横目に、ぼたんは呆れて、それ以上言葉が続かなかった。

「まぁまぁ、ぼたん。大丈夫ですよ。彼らも、何だかんだ言って、ちゃんと任務は果たしますから。」

肩を落としているぼたんを、蔵馬は静かになだめた。

「よぉし、そんじゃ、映画でも観に行くか!おい、蛍子!!出掛けるぞ。」

「えっ。待ってよ、幽助。」

「モタモタしてっと、置いてくぞ」

「あっ、もぉ、待ってよ。」

真っ先に家を飛び出した幽助を追って、蛍子も置いて行かれないよう、足早に外へ出て行った。

「さぁ、雪菜さん、行きましょう。」
「えぇ。楽しみですね、和真さん。」

桑原は、雪菜だけしか見えていませんというように、雪菜だけを見つめながらエスコートすると、夢中で話を弾ませながら、幽助達の後を追うように出て行った。

「あっ!!もぅ。みんな待っとくれよ!!」
ぼたんは、2組の姿を目で追うと、なんとなく追いかける気にもなれなかった。

「本当・・自分勝手なんだからぁ!!」

みんなが好き勝手に出て行き、気が付けばぼたんと蔵馬だけが取り残されていた。

突然残されて二人きりになった空間には、微妙な空気が流れていた。

(あたしだって、蔵馬と一緒に行きたいさね。でも・・)

ぼたんは、こんな雰囲気の中で、きっと蔵馬なら自分に気を遣って、仕方なくでも誘ってくれるに違いないと思った。

それを思うと、あまりにも酷に感じた。

「蔵馬!あたし、そろそろ帰・・」

「ぼたん、何してるんです?ほら、行きますよ。」

そういうと、蔵馬はぼたんに手を差し伸べた。

「え・・?」



「行かないんですか?」
蔵馬は、にっこりと笑って、さらに手を近くに差し伸べた。

「い、行くよ!!」
蔵馬に押されるように、ぼたんは思わず返事をした。

その返事を聞くと、蔵馬はすぐにぼたんの手を取った。

「あっ。ちょっと・・蔵馬。」

「まさか、俺を一人置いて行こうとなんて、しないですよね?」
蔵馬がくすくす笑って言った。

「べ、別に置いてこうなんて・・。そ、それより、蔵馬。手・・」

「もう、離しませんよ。あなたが、一人でどこかに行かないようにね。」

「ど、どこかってどこだいっ。もぉ、蔵馬ぁ。」

ぼたんは、しっかりと繋がれた自分の右手を恥ずかしそうに見た。

蔵馬は、その様子を見ながら、楽しそうに笑っていた。

「さっきみたいに、俺を一人にしないようにです。」
蔵馬は冗談まじりに言った。

ぼたんは、蔵馬に手を引かれながら、顔を赤くした。

蔵馬は、繋いでいる手にぎゅっと力を込めると、優しくも真剣な表情をした。

「ぼたん。これからは、ずっと一緒にいましょう。いつでも、どんな時でも・・。」

ぼたんは少し驚いて、蔵馬の顔を見た。
その真っ直ぐな眼に、戸惑いながらも、恥ずかしそうに、「うん。」と小さく頷いた。

繋がれた手は、二人の心も繋いで行く。
これから先の、未来まで・・。

-end-

■あとがき■
短い小説ですが、読んでくださってありがとうございました!
落書きみたいなイラストを載せてしまって本当にすみません・・。
もっとちゃんとした紙に描くべきでした・・(反省)
ご意見・ご感想など頂けると嬉しいです!
この小説についてのあとがきは、Diaryに載せていますので、合わせて読んで頂けると、なお嬉しいです!
ありがとうございました。



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