novel
□その手を繋いで
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その日は、コエンマからの指令を伝えるため、幽助、桑原、蔵馬、そしてなぜか桑原が呼び出した雪菜と、学校帰りに居合わせた蛍子が、幽助の家に集まり、ぼたんがその言伝をしていた。
「おーっし。用件はそれだけだな?」
「ちょいと、幽助!それだけって、あんた自分の立場、ちゃんとわかってんだろうね!?」
「わーってるって。つまり、悪さしてるちっちぇー妖怪見つけたら、ぶっ飛ばせばいいんだろ?まっ、そんときゃそんときよ。それより桑原、せっかくだから、パーっと遊びにでも出ようぜ。」
「ちょっと、幽助!あんた真面目に・・」
「おっ。いいねぇ。雪菜さんも行きましょうよぉ。」
「はい!」
「もぉ、雪菜ちゃんまで・・。」
勝手に盛り上がっている幽助たちを横目に、ぼたんは呆れて、それ以上言葉が続かなかった。
「まぁまぁ、ぼたん。大丈夫ですよ。彼らも、何だかんだ言って、ちゃんと任務は果たしますから。」
肩を落としているぼたんを、蔵馬は静かになだめた。
「よぉし、そんじゃ、映画でも観に行くか!おい、蛍子!!出掛けるぞ。」
「えっ。待ってよ、幽助。」
「モタモタしてっと、置いてくぞ」
「あっ、もぉ、待ってよ。」
真っ先に家を飛び出した幽助を追って、蛍子も置いて行かれないよう、足早に外へ出て行った。
「さぁ、雪菜さん、行きましょう。」
「えぇ。楽しみですね、和真さん。」
桑原は、雪菜だけしか見えていませんというように、雪菜だけを見つめながらエスコートすると、夢中で話を弾ませながら、幽助達の後を追うように出て行った。
「あっ!!もぅ。みんな待っとくれよ!!」
ぼたんは、2組の姿を目で追うと、なんとなく追いかける気にもなれなかった。
「本当・・自分勝手なんだからぁ!!」
みんなが好き勝手に出て行き、気が付けばぼたんと蔵馬だけが取り残されていた。
突然残されて二人きりになった空間には、微妙な空気が流れていた。
(あたしだって、蔵馬と一緒に行きたいさね。でも・・)
ぼたんは、こんな雰囲気の中で、きっと蔵馬なら自分に気を遣って、仕方なくでも誘ってくれるに違いないと思った。
それを思うと、あまりにも酷に感じた。
「蔵馬!あたし、そろそろ帰・・」
「ぼたん、何してるんです?ほら、行きますよ。」
そういうと、蔵馬はぼたんに手を差し伸べた。
「え・・?」
「行かないんですか?」
蔵馬は、にっこりと笑って、さらに手を近くに差し伸べた。
「い、行くよ!!」
蔵馬に押されるように、ぼたんは思わず返事をした。
その返事を聞くと、蔵馬はすぐにぼたんの手を取った。
「あっ。ちょっと・・蔵馬。」
「まさか、俺を一人置いて行こうとなんて、しないですよね?」
蔵馬がくすくす笑って言った。
「べ、別に置いてこうなんて・・。そ、それより、蔵馬。手・・」
「もう、離しませんよ。あなたが、一人でどこかに行かないようにね。」
「ど、どこかってどこだいっ。もぉ、蔵馬ぁ。」
ぼたんは、しっかりと繋がれた自分の右手を恥ずかしそうに見た。
蔵馬は、その様子を見ながら、楽しそうに笑っていた。
「さっきみたいに、俺を一人にしないようにです。」
蔵馬は冗談まじりに言った。
ぼたんは、蔵馬に手を引かれながら、顔を赤くした。
蔵馬は、繋いでいる手にぎゅっと力を込めると、優しくも真剣な表情をした。
「ぼたん。これからは、ずっと一緒にいましょう。いつでも、どんな時でも・・。」
ぼたんは少し驚いて、蔵馬の顔を見た。
その真っ直ぐな眼に、戸惑いながらも、恥ずかしそうに、「うん。」と小さく頷いた。
繋がれた手は、二人の心も繋いで行く。
これから先の、未来まで・・。
-end-
■あとがき■
短い小説ですが、読んでくださってありがとうございました!
落書きみたいなイラストを載せてしまって本当にすみません・・。
もっとちゃんとした紙に描くべきでした・・(反省)
ご意見・ご感想など頂けると嬉しいです!
この小説についてのあとがきは、Diaryに載せていますので、合わせて読んで頂けると、なお嬉しいです!
ありがとうございました。