黒子のバスケ

□誠実って、何ですか。
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『おれのこと嫌いになっていいよ、くろこっち。』

そんな酷いことを口にしながら黒子を犯す彼が理解できなかった。

『だって、嫌いになったら忘れないでしょ?』


好きだなんだと告げる黄瀬の言葉を本気で信じたことはなかった。好かれているなんて思ってなかった。

でも、どこかで自分は黄瀬に嫌われてはいないと、そんな驕りがあったのだと思う。

―――まさか、ここまで恨まれているなんて、ここまで嫌われているなんて。

黄瀬の言葉を信じたことはない。だって彼は、不誠実。
嘘しかつかない。

信じられるはずがない。

だって黒子は知っているのだ。

黄瀬が、その腕で、その身体で、数多くの女の子を抱いてきたことも、それらの女の子に何の気持ちも抱いていなかったことも。

すべて知っていて、何故信じることなどできるだろう。

「くろこっち、すきだよ、すき…あいしてる。ほんとっスよ、オレね、くろこっちにだけはウソつかないんスから…ね?」

だから、信じて。

「ひぁっ、ぅ…ふあっ、や…ん」

黒子の身体を好き勝手弄びながら何故そんなことが言えるのか。

―――嫌いになんてなれない。

嘘ばかりつかれても、酷く傷つけられても、それよりも

ただ好きで、好きなだけで。

こんな何の気持ちも伴わない行為すら黄瀬から与えられたものであるというだけで嬉しく感じてしまう自分が浅ましくて、嫌になる。

「も…っ、やめて、くださ…ひ、やあぁっ」

「だぁめ、」

ちゅ、と嫌に優しく口づけられて、涙がこぼれ落ちた。

キスなんてしないでほしい。
優しい目で見ないでほしい。

丁寧な扱いなんて、しないでほしい。

いずれ無くなる温もりなら最初から無いほうが楽だ。
傷付かないで済む。

「ふっ…ぅ、も…きせくん、なんて…、きら…っ」

「うん、それでいいんスよ」
もっともっと、オレを嫌って、恨んで、くろこっちの中にオレの存在を刻み込んで。―――


黄瀬くんなんて嫌い。
そう呟きながら、美しくて酷い、それでも愛しい彼に抱かれ続けた――――……。

不誠実な彼に、誠実な嘘を。

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