黒子のバスケ
□reason
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黒子はずっと瞠目したまま表情を強張らせて、黄瀬を見つめている。
「何でもするよ…っ!別れないでいてくれるなら、何でも、するから…!!」
床にパタパタと雫が落ちるのを、どこか冷静に見つめる。
頭の中は、どうしたら、何を言ったら黒子は自分の元に戻ってきてくれるのかを必死に考え、少ない語彙を引っ掻き回しているというのに、どこかでもう諦めるしかないと冷めた思考が見え隠れする。
しかし、一瞬後、その全ての思考が吹き飛ばされた。
バシッと耳元で張る音がし、半瞬後には頬に痛みが走る。
熱を持ったその部分を呆然としたまま無意識に摩り、ぼやけた視界に顔を歪めた黒子を捉えた。
「っ…君は、っどうして………!!」
何故黒子が、泣きそうに顔を歪めているのかわからない。
「?…くろこっち?」
呆然としたまま声をかけると、黒子はそれ以上何も言わずに踵を返した。
バタン、と、ドアの閉まる音が妙に大きく聞こえ、最後通牒を突き付けられたのだと悟ってやるせない思いが込み上げるのと同時、同調しているかのようなタイミングで引いていた涙が再び零れ落ちた。
本当に、今度こそ捨てられてしまった。
けれど、それなら、どうすればよかったのだろう。
いっそのこと気付かない振りをしていれば、彼はもう黄瀬に気持ちがないのだとしても、関係を続けていてくれたのだろうか。
涙腺が崩壊したが如く涙を流し、ズキズキと疼痛が走る頭でいくら考えても、黄瀬には答えがわからなかった。