フィディオ・アルデナ

□あの日から君は…U
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あの日から1か月。






そう。あれから1か月も経っているのに…





―――――――――――






「あはは。


ぼくのなまえは〈おまえ〉じゃなくて〈ふぃでぃお〉だよ。」





「おま――」


「〈ふぃでぃお。〉



















………………じゃあね。









えどがー。」







―――――――――――






そう言って帰ったフィディオの悲しい顔が忘れられない。



「はぁ…」


1つの事にこんなに悩むなんて…









とんとん。


「坊っちゃん。

アフタヌーンティーの用意が…」




「………」








行動を洗い直してみるか。





俺は何か気に触ることを言ったのか??


でも、あいつは楽しそうに話していたはずだ。




なのに帰り際だけ…








「フィディオ・アルデナ様の事ですか?」


「((ビクッ!!」



振り返ると…



「驚かせてしまいましたか。申し訳ありません。」


「アーサー。」



そこに立っていたのは私の専属執事―アーサー・カークランド。

気のきく、優秀な男だ。



謝っているのに頬が上がっているぞ。




「お悩み事でしたら、聞きますよ。」


「いや、結構…」


「こういう事は話すだけで楽になるというものです。

さぁ。
紅茶を飲みながらでも…。」


そういいながら手際よくアフタヌーンティーの準備をしてくれる。




まぁ、紅茶も飲みたいし…。



「じゃあ…
ここに座れ。」


「はい。」



そんなににこにこするな。
なんか負けた気がする。






「そういえばさっき何でフィディオの名前を出したんだ?」


「あぁ。
坊っちゃんが何やら悩んでいらっしゃるのは
フィディオ様がいらっしゃってからですから。

何かあったのかと…。」



「……そんなに分かるか。」


「はい。」



なんか見透かされた感じだ。

少し冷めた紅茶をグイッと飲む。





「これからは私の独り言だから。
気にするな。」


「はい。」



だからにこにこするな。









アーサーはこう見えても意外と頼りになるやつだ。

私はフィディオと友達になったこと。
帰り際にした会話。
フィディオの…悲しい表情のこと…。
全て話した。




「1か月も経っているのに
その時のフィディオの表情が忘れられないんだ。」


「坊っちゃん。

坊っちゃんはフィディオ様にご家族の事をうかがったんですか?」


「あぁ。」



「あぁ〜。」


座っていた椅子の肘掛けにに項垂れるようにするアーサー。




「もしかして何かまずかったのか。」


「まぁ、ご存じないのも仕方ないですが…。」


「何か知っているのか!!」





それが原因で

私が悪いならフィディオに謝らなければならないしな、これを聞かない手はない。



「これは、誰にも言ってはいけないですよ。」


アーサーは人差し指を口許に当てながら言った。






「アルデナ家は2年前になくなったことになっているんです。」


「え。


だがフィディオは」


「えぇ正真正銘、フィディオ様はアルデナ家のご子孫です。


しかし、今は親戚にあたるロベリタ家に引き取られているのです。」


「フィディオ様のお父様…アルデナ家の当主様はフィディオ様が生まれて間もなく病で亡くなってしまい、
それからは母君のミリア様が率いていらっしゃったのですが


2年前、アメリカに遠方に出掛けている時に…事故で……」




「ッッ!!」



「そして一人っ子だったフィディオ様は心の支えであったミリア様を突然亡くし、
暫くはろくに食事もとらず部屋に閉じ籠ったままだったそうです…。

そこで、ミリア様のご姉妹のシルフィ・ロベリタ様に引き取られたのです。

ほおっておけば当主の座は愚か命にも関わる状態でした。






フィディオ様にとってご家族の事はトラウマ同然なのですよ。」








最低だ。








「アーサー。

車を出せ。」



「そう仰ると思いましたよ。

表につけてあります。



行き先はイタリアで宜しいですか?」



「さすがアーサーだ。」





急いで着替え、玄関に向かって走り出した。





たったったっ……






「ふぅ…



ったく、世話のかける。






…いってらっしゃいませ。

坊っちゃん。」


アーサーは自分の残った紅茶に口を付けた。







最低だ。







知らなかったといえ、軽々と聞いていいことではなかったんだ。





アーサーがつけてくれた車に乗り込む。







「おい。

早く出せ。行き先はロベリタ家だ!!」





別に急ぐことでは無いと分かっているけれど、







「早く!!」



















このままではフィディオが遠くに行ってしまう気がした。
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