フィディオ・アルデナ
□片想い
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イタリアの宿舎は2人部屋である。
そのペアは気の合う者同士、仲の良い者同士で組まれるよう設定してあるのだ。
そして、イタリア代表の中では上下関係をなくすということで、呼び名は全てファーストネームになっている。
では、ある一室を拝見してみましょうか。
ドアはシックでイタリアではごく一般的な作り。
そのドアに掛けられている表示は。
ROOM*317:
フィディオ、アンジェロ
そこには二人分のベッド。
一応みんな学生ということでデスクが2組。
やはりイタリア代表といってもまだ学生。
学業を怠ってはいけないので毎週火、土の午前中は、宿舎に設けられた教室で授業を受けて、学生として必要最低限のものを学んでいるのである。
あとは、テレビやクローゼットなど、生活に必要なものが取り揃えてある。
「ねぇ、フィディオ。」
「〜♪
え?何?アンジェロ。」
そこには自分用のベッドで寛ぐ二人。
アンジェロは、室内用のマイサッカーボールでじゃれているフィディオに問いかけた。
「フィディオさぁ。
好きな人でもいるの?」
「はぁ!?
そ…そんなのいるわけないじゃん!!」
この二人は実は小学生の時からの親友である。
「うそ。
フィディオ赤くなってるし、目反らしてる。」
なので、互いの癖などはお見通しである。
「…違うって…言ってんじゃん。
それに、今はイタリアから離れてるわけだし…好きな人なんか…。」
「そう?
じゃあ、例えばその想い人がこの島に居るとか?」
フィディオはじゃれていた手をピタッと止め、サッカーボールを抱えるように抱き締め
「そんな訳…ないじゃん。」
とまぁ恋する乙女のような反応を示してくれたのである。
(フフフ…フィディオったら分かりやすいんだから。
そんなに意地を張るつもりなら、もう少しイジメちゃおっかな♪)
アンジェロは意外と腹黒ちゃんだったりするのである。
「フィディオ、最近鏡よく見てるよね。」
「それは………この頃、乾燥気味だなぁって思って…!」
「鏡の前でいつも笑顔の練習してるよね。」
「何でそこまで…じゃなくて!!
ファン…そう。ファンサービスのためだよ!!」
「ふーん。
ファンサービスねぇ。」
「そうだよ!!
仮だとしても、俺はイタリア代表のキャプテンなんだから。
ファンは大切にしないといけないんだよ!!」
「じゃあ、イギリス戦の時に妙に髪型を気にしてたのは?」
うわぁ…アンジェロちゃん、完全に遊んでますよ;
「それは…イタリア人として常に正しい身なりじゃなきゃって…!!」
「でも、エドガーと話してた時に妙にソワソワしてたよね。」
「えっと…寝癖が…ついててッ。
気になったから。」
(エドガーって名前を出しただけで真っ赤になっちゃって…
フフフ。トマトみたい。)
「じゃあ、これは?」
(女子中学生向けのファッション雑誌。
特集は気になる彼を落とす方法☆)
「!///
…何で。何でアンジェロが持ってるんだよ!!///」
「この前掃除したときにフィディオのベッドの下に落ちてたんだよ?
落・ち・て・た・の。」
にやり☆
「それは…この前ッ拾ったんだ。
……グラウンドの近くで!!」
「へぇ〜。
じゃあ、何で特集の
[紳士的な彼を落とす方法♪]
のところに印が付いてるのかな?」
「ーーーーッ!!///
そんなの…何でもいいだろ!!」
ばっ!!
(あ。怒っちゃったかな?
まぁ、本を奪い取られた時点でフィディオの私物ってことは確定されるんだけどね。
それに、例え背中を向けてもその赤い耳は隠せてないよ。
フフフ。可愛い。
そんなフィディオだから手放せないんだよね。)
「フィディオ。」
「……。」
「(…拗ねちゃった。)
ねぇ。」
「………。」
(フフ。こうなったら…。)
「紅茶。」
「!!」
(お。
やっぱり反応してくれた♪)
「薔薇。」
「ぴくっ」
「ロンドン。」
「///」
「英語。」
「ぴくっぴくっ」
「ナイツオブクイーン。」
「っ///」
(あぁ。
そんなにサッカーボールを抱き締めちゃったら壊れちゃうよ。
それに、こんなに真っ赤になるなんて…
イジメがいがあるじゃないか!!)
「エドガー・バルチn…
「もういい!!!
アンジェロなんか…
アンジェロなんかっ大ッ嫌い!!!/////」
ばんっ!!
「あ〜あ。
いじめすぎちゃったかな。」
「全くだ。何回いじめれば気が済むんだ、アンジェロ。」
「ブラージ。
だって、困ったときのフィディオの顔、すごく可愛いんだよ?」
「だとしても…限度ってものがあるだろう。」
「でも、フィディオがあんなに本気になるなんて…
エドガー・バルチナスか…。
僕の手からフィディオを奪うなんて絶対許さないよ。
覚悟しててよね…。
フフフ。」
「はぁ、聞いちゃいねぇよ。」
(この、堕天使め!!!)
イタリアの愛娘、フィディオ・アルデナには最強にして絶対の堕天使ちゃんがついているのでした。