吹雪士郎

□ある暑い日
1ページ/2ページ

「あ"〜づ〜い"」
外では一足も二足も早い蝉の合唱が聞こえる。

あ〜暑い暑い。今年は暑すぎる。
まだ梅雨明けしたばかりなのにいきなりの暑さ。
これはイジメの域だ。
あ"〜溶けそう。

「ア〜ツヤ。かき氷食べる??」

「おう!!俺レモ…ン……
士郎??…なんだその格好。」

士郎は普段では着ない、もはや夏の風物詩―浴衣を纏っていた。
これから祭りに出掛けるとか、花火大会があるとかいう予定は一切ない。

「あぁ〜これ??音無さんがくれたんだぁ〜!
これで楽しんでくださいだって。
何の事だろうねぇ。」

…音無お前…。
あの兄妹はいろんな意味でナメちゃいかんな。

「初めは貰うの引けたけど…もうあんまり着てないって言ってたし、柄が凄く綺麗だったから貰っちゃった☆」

士郎…それはその浴衣が女物だからだ。
音無のお下がりよく入ったなぁ。
紺色にピンクの花がバランス良くあしらわれてている。

どう見ても女物にしか見えねぇよ。


「で、何で今それ着てんだよ。」

「ん〜。暑いから。
浴衣って見た目は凄く涼しそうでしょ?」

士郎はそう言いながら襟元や裾をパタパタさせている。
チラチラ見える白い首元、太もも…

音無…癪だが今度アイス奢ってやろうかな。

「…アツヤ?」

「は?…あッあぁ。
何だ?」

やべぇ…意識し出したら直視できねぇよ。

「て訳で、
アツヤも着るんだよ!!」

………はぁ!?


――――――――――――――――――――

「あつやぁ〜!
着れた??」

「あぁ…でもッこんなので人前に出れねぇよッッ!!!//」

「大丈夫だって!
アツヤも…似合う……よッッ!!!」

「うわぁッ!!」

吹雪のバカ力で部屋から出される。

そこには士郎と同じ紺色の淡い赤色の椿柄の浴衣を纏っt「そんな訳あるかああああぁぁぁ!!!!!」


「あつや??誰に叫んでるの〜?」

「俺を腐った目で見ている全国の女子の皆さんにだッッ!!!」

「??」

そんな全国の腐女子に言っておく。


俺はそんなどこぞの萌キャラじゃねぇんだよ!
ん。
勿論士郎は例外だ。

士郎はお前らが言う「男の娘」っていうやつだからだ。

士郎が「男の娘」と呼ばれるのはその白い肌だけでなく、
垂れた目、柔らかい髪質、体の線の細さ、何処を取っても女子が羨むようn「あ……や………あ…つや……あつやッッ!!」

「!!」

「あつや、どうしたの??
さっきから独り言多いよ…


僕、寂しいなぁ…」

分かったか。

これが吹雪士郎だ。「男の娘」以外に表現はない。

「あぁ…悪かったな。」

「あつや、その甚平凄く似合ってるよ!!」

あぁ。言い忘れたな。

俺は浴衣じゃなく甚平を着ている。
さっきの妄想の甚平バージョンだ。
そのあたりは音無に感謝だな。

「(ジーーーー)」

「…??」

視線を感じると思ったら士郎にガン見されていた。
しかもトロンとした目、微かに染まった頬、柔らかそうな唇
それに加え浴衣というオプション付き…俺も体温が上がっていくのが分かる。
可愛すぎるだろ。

「…士郎…??どうかしたか?」

「ふぇ!?…え、あ…何でもない!!


ただ…
ただ、あつやがかっこ良すぎて見惚れちゃった。」

「ーーーーー!!!////」

かわいすぎる。この生き物。

小首を傾げるのは反則だ。


ちゅッ

「ーーーー!!!!あ、あつや!?」

思わず士郎の頬にキスした。
可愛らしいリップ音を付けて。


「士郎……可愛すぎ。」

「へ!?…そんな事ないよ!!」

残念だな、士郎。
顔を真っ赤にしてその言葉は合わないぞ。

暑い日も悪くないなと思った
そんな初夏の1日。


――――――――――――――――――――
「折角だから今度の花火大会、この格好で行こうね!!」

「あ…あぁ…。(士郎…無自覚なのか。
この天然めッッ!!!)」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ