吹雪士郎

□3055.7km
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「綱海くん…。」



会いたいよ。

僕の独り言は君の大好きな波にかき消された。

行っては帰り、行っては帰り。
波しぶきを立てながら引いていく。
その淡々とした動きが好きだって君は言ってたね。

でも、僕には分からないよ。










「3055.7Km…」











そう。
ここ、北海道の最南でも沖縄の最北まで3055.7Kmもある。





「好き。」





恋人なのに距離も離れてて、連絡もとれないなんて…。
折角君のために携帯買ったのにメールくらいくれないの?













僕のこの声も、思いも君には届いてないんだよね。





ポケットに入っている携帯手に取り、強く握る。

そこに光る雪の結晶とハイビスカスのストラップ。

これは、互いの誕生日が近かったから交換し合ったんだよね。









多分君も付けてくれてるよね?







あぁ…
ワガママだって分かってるけど。












「会いにきてよ…
ぐっ…ひくっ









条介ぇ!!」







何だか綱海くんの事考えたら泣けてきちゃった。
これが遠距離恋愛ってことかなぁ。












ヴーー。ヴーー。










両手に握りしめていた僕の携帯が着信を知らせる。



こんなときに…。
誰かなぁ。




え。








「ッ!!
も…もしもし!!」










『よう。
悪いな、連絡できなくて。






お前が寂しがってると思って。』






「ばかぁ!!
ひくっ…ひくっ…。






今すぐ会いにきてよ!!」






いつもは言わないワガママを言ってみる。
叶わないことは分かってるけど。















「分かってる。」










背中に優しい感覚。
聞き覚えのあるその声。
体温。匂い。





体は動かせないから首を回してみると
特徴的なピンクの髪。














「綱海くん!!」



















この瞬間だけは北海道の冷たい海も好きになれそうな気がした。
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