吹雪士郎
□想い出の場所T
1ページ/4ページ
はぁ…はぁ。
行かなきゃ。
あの木の下にきっといる。
「お兄ちゃん!!」
「あ。虎ちゃん。
そんなに急いでどうしたの??」
そこには中性的な顔立ちをした美しい少年。
「引っ越しちゃうって本当なの??」
「情報早いね。
そうだよ。ここよりもっと寒いところなんだって。」
お兄ちゃんは綺麗なグレーの目で遠くを見た。なんだかすごく寂しそうに…。
「お兄ちゃん…。」
お兄ちゃんって言っても血は繋がっていない。
幼馴染みで家が近所なだけ。
生まれた頃から一緒に遊んだりしていたから、一人っ子の俺にとっては本当のお兄ちゃんみたいなものだ。
「虎ちゃん。
まだ分かんないだろうけど、今から言うことは絶対覚えててね。」
「うん。」
「虎ちゃん、僕ね。
虎ちゃんのこと好き。
大好きなんだ。」
「え。
俺もお兄ちゃんのこと好きだよ!」
「…そう。
じゃあ僕の事…それにこの場所の事、忘れないで。」
「うん!!
忘れない!!」
そのお兄ちゃんの表情はすごく悲しそうな目をしていた。