吹雪士郎

□眠さには耐えられません。
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私が下がった後、吹雪君はスクッと立ち上がって、



バァンッッ!!ドカッ!!!



さっきまで私たちが座っていたベンチを下から怪我をしてない方の足で蹴り上げ、

その反動で浮き上がったクーラーボックスをボール代わりに蹴った。

それは試合をしている皆にも聞こえるほど大きな破壊音で…


一同がシン―と静まった。



え…。吹雪君?と私が声をかけても反応はなく、
相変わらず下を向いている。



「鬼道くん…今の試合運びは何?」



「え…。
吹雪…お前、どうし
「僕は!!
どんな試合してるのって聞いてるのッッ!!!」



バッと勢いよく顔を上げる。

真っ直ぐで強い目。



メンバーにも吹雪君の異様な威圧感に気がついたみたい。

みんな固まっている。





「豪炎寺くん、虎丸くん、ヒロトくん。」

「「「ッッ!!……はい。」」」

「君たちは日本のストライカーでしょ。
なのに……さっきのシュートは何?」

「「…………。」」




「風丸、栗松くん、壁山くん、小暮くん、綱海くん。

君たちはDFだけど、

DFってただ守ってればいいの?」

「「…………」」

「例え体力が限界でもシュートを打つFW陣をサポートするとか…やることはいっぱいあるはずでしょ?
なんでそれをやらないの?」




吹雪君の言ってることは全て正論だ。

しかもFWもDFも経験していて、実力も桁違いだから説得力が違う。




「最後に……立向居くん、キャプテン。」

「……」「……おう…。」



「……そんなんで…日本のゴールを守れるの??」

「「!!!」」

「世界にはまだまだ強い人たちが……居るのに……そんな…ので……い………ぃ…の」



フワッ



「わぁッッ!!」



突然電池が切れたように言葉に迫力が無くなっていったかと思ったら、

フラッと後ろに倒れてきた。


私は咄嗟に体を支える。

吹雪君は私たちが羨むほど細いので支えるのは困難ではなかった。
本当に軽い。



「スー」



急に倒れたからどうしたのかと思ったら………寝ている。完全に寝てる。



「「「「…………」」」」



皆は図星を付かれたのか誰1人として言葉を発する事はなかった。





私達は初めて吹雪士郎という本性を知った気がした。
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