□8000記念キリリク
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 しんしんしん。
 雪は、そう降り積もるものだと思っていた。

―――何だこれは。

 今まさに「ビュオォォォォォ!」と言う表現が相応しい状態で雪が降っている。いや、吹雪いている。
 これから吹雪くぞ、気を付けろ!とは確かに言われた。しかし北国育ちでないからそれが何を意図しているのか、分かったつもりでちっとも分かっていなかった。これからどうして良いかさえも分からない。雪をしのげる場所を探して動いて良いのか、ここにとどまるべきなのか。ここにとどまっていても、雪に埋もれて凍死するのがオチだろうが…

「おい、誰かいないのか!東方司令部のロイ・マスタング大佐だ!」
 何度そう大声で呼び掛けただろうか。いつになっても返事は返ってこない。
 不安に押しつぶされそうになったが、腕の中で震える副官のことを思うと、自分がしっかりしなければ、と己を奮い立たせるより他無かった。
「寒くないか?」
「…大丈夫です」
 ロイの問い掛けに答えるリザの声は弱々しく、寒さでかすれていた。ロイの防寒着の中に入れて抱いてはいるが、体温も体力もかなり奪われているようだ。

 二人が勤めている東方司令部は北方司令部と定期的に合同演習を開いており、今回は冬に行うこととなった。今日は演習の最終日で、実戦訓練をしていた。各司令部二人ずつの四人組で行動していたのだが、猛吹雪に巻き込まれ、ロイとリザははぐれて身動きがとれなくなってしまった。はぐれてからどれ位経ったのだろう。ロイもそろそろ限界だった。
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