ロイリザ短編

□猛暑
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開け放った窓。
そよ風すら吹かない中で、滝のように流れてくる汗。
「暑い…」

今日は久しぶりの非番なのに、この夏一番の暑さなのだそう。何でよりによって今日?
その上、空調機をつけていたら、何やら嫌な音がしてそれきり冷風が出てこない。電気屋は定休日。もう、何でよりによって今日!
飼い犬のハヤテ号に目をやると、彼も暑さに耐えられないらしい、降参と言わんばかりに床に寝そべっている。
「暑いわね」
「クゥン…」
ハヤテ号の頭を撫でると、玄関の鍵ががちゃりと開けられた。私の家の合鍵を持っているのはただ一人。私の上官であり恋人でもあるロイ・マスタング大佐。しかし今日は勤務のはずだ。
「リ〜ザ…何だ、いないのか…」
「います。」
部屋が暑いから、外出していると勘違いしたのだろう。無理もない、これだけ暑ければ…
「今日は勤務ではなかったのですか?」
「どうしてもリザに会いたかったから、仮病を使って休んできた!」
休んできたって…この人は自分の地位を分かっているのだろうか。
「ばれないように変装もしてきたから大丈夫だ!」
自慢げに取り出したのは、瓶底眼鏡に鼻と髭がついたもの…こんなもので変装していたら余計に目立つでしょう!
「というのは嘘で、空調の使いすぎで司令部の電線がショートしてしまって、もう仕事にならないだろうと帰されたんだ。」
「そうだったんですか…」
「まさかリザの家も?」
「いえ、空調自体が壊れたようで…」
異音がしてから動かなくなったことを伝えると、彼は空調を調べ始めた。そしてさっと錬成陣を描きーーーあっという間に直してしまった。空調から、冷たい空気が再び吐き出された。
「ありがとうございます!」
ハヤテ号も嬉しそうに尻尾を振っている。
「さて、お礼に何をしてくれるのかな?」
いたずらな笑みを浮かべるロイ。彼との距離がどんどん縮められていく。顔がどんどん迫ってくる。

「リザ、そろそろ暑い…」
私は彼に抱きついていた。先程のロイのようにいたずらな笑みを浮かべて彼を見る。
「お礼のハグです」
今度は彼の方から抱き締めてくる。
「そうか、そんなに私に捕まりたいのか」
妖しげな笑みを浮かべる彼を見て、しまったと思ったがもう遅い。逃れようともがくが彼の力には抗えない。
「これからたっぷりお礼をしてもらうとするかな」



ーーーゴスッ。
「〜〜〜〜〜〜〜○※△$¥ッ!!!」
「昼間から何考えてるんですか、この変態佐!」
彼のあごに頭突きを食らわせてさっと腕から逃げ出した。
「私、買わないといけない物がいっぱいあるので出掛けてきます。」
「わ、私も行く!」
ハヤテ号を引き連れて出る私を慌てて追い掛けてくるロイ。何だかその姿がおかしくて笑ってしまう。
「一緒に行きましょうか」



今日は本当に暑い。だけど不思議と繋いでいる手は暑いと感じない。

貴方といることができれば、暑さも寒さも全て吹き飛ぶの。

これからも、貴方のそばに居させてください。



彼の手を、更にぎゅっと握りしめた。

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