ロイリザ短編
□Grande Valse Brillante
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アメストリス国セントラル市内。その一角で、建国記念のパーティーが催されていた。立食形式で行われているそれでは、カクテルやワインを片手に談笑している者や、ホールで演奏に合わせて踊っている者もいた。
しかしその中に、つまらなさそうにしている男が一人―――ロイ・マスタングだ。
「大佐、つまらないのは十分分かりましたから、せめてつまらなさそうな顔をするのだけはやめていただけませんか」
少し厳しい口調で諫める女性―リザ・ホークアイは、そう言って彼にプレートを渡す。見ると、数品ほどが綺麗に盛り付けられていた。
「あぁ、すまない」
それは表情に関してなのか、料理をついできてくれたことに対してなのか。
ロイが一口食べるのを確認すると、リザも自分の分を食べる。彼女の皿にはあまり盛り付けられていなかった。疑問に思ったロイは、食べないのか、と問い掛ける。
「大佐のお守りをしないといけないので。」
「別に逃げ出しはしないよ」
苦笑すると、信用できませんとピシャリとはねのけられた。それが恋人に対する態度か?ぐすんぐすんとキノコを生やしてみたが、無視されてしまった。何だこれ、めちゃくちゃ恥ずかしいではないか!
その時、照明が落ち、大総統がスポットライトで照らされる。長話は嫌いだから、と簡単に一言喋っただけで、会は再開された。
ロイは、しばらくリザが持ってきた料理をつついていたが、ふとあることに気が付いた。
「中尉」
「はい」
「ブレダとハボックはどうした?」
この二人も一緒に来ていたのだが、いつの間にか姿を見失っていた。
「ブレダ少尉でしたら、あちらに」
目線の先をたどると……………必死に料理を食べているブレダの姿。ここに来る途中の汽車の中でもばかみたいに食ってたのに…
「ハボックは?」
「ハボック少尉はあちらにいますが、そっとしておいて下さいとか、美人がどうの、ボインがどうのとか言ってました」
どうせボインな美人に声を掛けて玉砕したのだろう。
「…放っといてやれ」
納得のいかない様子で頷くリザだったが、すぐにまた料理を食べ始めた。それに倣ってロイも再び食べ出す。
―――ターン、タタターン、タタタン、タタタン、タタタン、タタ・・・
軽い調子でピアノの音がしたと思うと、曲が始まった。