ロイリザ短編

□先生しましょ。
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「今週もようやく終わりだな、実に金曜という日は気分が良い。どうだ、このまま私と保健体育の課外授業と言うのは?ホークアイ先生」
「勤務時間中にセクハラはやめて下さいマスタング先生。セクハラで教育委員会に訴えますよ」

 ここは、アメストリス東部にある某小学校。学年に1〜2クラスしかない小規模校である。
「いつ見ても五年の島は賑やかでいいッスね」
 羨ましそうと言うよりは明らかに茶化しているであろう彼は四年の担任のハボックだ。四年生は1クラスしかないので、半分は本音といったところか。
 つい今し方採点し終わったテストを思いっきり机に叩きつけ、この上ない笑顔でホークアイはハボックを振り返った。
「何か言ったかしら、ハボック先生?」
「いえ…何でもありません…すいませんでした・・・」
(目が笑ってねぇ!)
 そそくさと退散していったハボックを後目に、ホークアイはマスタングと向き合った。
「む?ようやく私と保健体育の課外授業をする気になったかね?」
「馬鹿なことを。来週の職場体験についての打ち合わせです」
 馬鹿なことを、とバッサリ切り捨てられキノコを生やしているマスタングに心底呆れてしまう。そもそも学年主任はホークアイではなくマスタングなのだ。
「シャキッとして下さい。今はまだ学年会の時間ですよ」
 渋々起き上がったマスタングに資料のコピーを渡す。
「来週一週間、職場体験で中学生が来ます。クラス分けは私が決めさせていただきました。一組さんにはエルリック兄弟が来ます」
「兄弟?双子か」
「いいえ、エドワード・エルリック中学三年生、アルフォンス・エルリック中学二年生の年子の兄弟です」
 目をぱちくりさせるマスタングに、この中学校は複式学級なんです、と続けた。
「中学校で複式学級とは珍しいな」
「正確には複々式学級ですが」
 通常のクラス編成は学年分けて行われるが、あまりに人数が少ない学校は二学年合わせて一クラスにするのだ。人数の少ない中学校では、三学年合わせて一クラスにする複々式学級と言うところもあるがこれはなかなか稀なケース。
「君のクラスには?」
「ウィンリィ・ロックベル中学三年生が来ます」
「よし、逆にしよう!」
「だめです、貴方のクラスに女の子を配属させたら何をされるか分かりませんので」
 そこでタイミング良く、定時を告げるチャイムが鳴る。手早く帰る支度をしたホークアイは、待て私もと慌てふためくマスタングにお疲れ様でした、と一礼して踵を返す。
「一緒に帰ろう、リ「何ですか、マスタング先生?」
 先生をやけに強調して言ったリザの顔には笑顔が無く、代わりに「職場内ではリザって呼ぶな!」と顔一面に書かれていた。
「ぃぇあの、一緒に帰りませんか、ホークアイ先生…」
「1分だけなら待ちます」



 こうして今週も無事、終わった。
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