ポケットモンスター【ベリル】
□第2話
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花畑の中で少年がただ一人、佇んでいる。
彼は旅に出るのだろうか、重たそうなリュックを背負い、髪をバンダナで纏めていた。
大きく風が吹き、花弁と少年の頬に優しく触れる。
その横顔は、険しいものだった。
「セレスお兄ちゃん!」
「……リル」
リルと呼ばれた少女は走ってきたのか、肩で息をしている。
セレスは彼女の息が整うまで待った。
「もう、いっちゃうの?」
「昼過ぎには出るけど、まだ居るよ」
リルは少し嬉しそうな顔を見せる。
しかし、自分が微笑んでいるのに気が付くと、照れたように話題を変えた。
「き、きれいなばしょだねっ」
「そうだな」
「しってるー?」
リルはしゃがみ込んで、小さな花を指先でつついた。
「この花の名前!」
「いや、知らないな」
「お兄ちゃんしらないのー?
ヒャクニチソウって言うんだよ」
「百日草、か……」
セレスは目を細めて、百日草の花畑を見渡した。
(……まさか、アカニタウンの半分が花畑になるなんて、思いもしなかったな)
そう、ここはアカニタウンなのである。
半年前の事件……ポケモンの襲撃事件により燃やされてしまった場所だった。
ついこの間まで更地だった、彼等の故郷。
しかし、いつ種が降り立ったのか、今ではそよ風の吹く美しい丘となった。