全短編

□君の笑顔の為なら・・・。
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―昼休み








「ユエいるか!?」
「はいはい。居ますよ〜。」


私は、突然私のクラスに大きな声を出して、現れた赤髪の男の子に投げやりの返事をした。



ヒドイ?
すみませんね・・・。
これが日常なもんで、テキトーになってるだけなんです。



「菓子くれぃ。」
「はいはい。・・・・今日はこれね。」
「うまっ!!」
(食べんの早っ。)


満面の笑みで私のもとへやってきて、いきなり手を私の目の前に出してきた。


・・・・これもいつものこと。


私は苦笑しながら、今日の選択授業で作ったカップケーキを彼に渡した。
彼はカップケーキを受け取るとすぐに口の中に突っ込んで、幸せそうな顔をした。
私は心の中で彼の行動の早さに思わず突っ込んでしまったが、幸せそうに食べている彼の姿は私にとって嬉しいことだった。


(まぁ、こんな顔されるからあげちゃうんだよねぇ・・・。)


毎回大声で呼ばれて、お菓子の催促されるのは嫌だけど、幸せそうに食べている彼を見るのは和むので好き。
次々と口にカップケーキを運ぶ姿はなんとも可愛らしかった。




















な〜んで、クラスも違うのにこんな関係になったのかというと、1ヶ月前に遡ることになる。




















―1ヶ月前


















「ねぇねぇ、作ったお菓子誰にあげる?」
「もちろん丸井くんよ!!」
「私は柳生君!」


キャピキャピした女子の声が聞こえてくる。
まぁ、隣の台所の班で作ってるから当たり前なんだけどさ。
しかも、話の中にはテニス部Rの人の名前が出てきている。さすが人気があると思った。


(作ったお菓子を誰にあげるかなんて・・・・・青春してるなぁ。)


私は女子の話を聞いてそんなことを思っていた。
青春期真っ最中の女子中学生の思うことじゃないかもしれないけど。


(しかし、あれをあげるのか・・・。テニス部Rの諸君、生きられたらいいね。)


乙女だな・・・なんて考えて彼女たちの手の中にあるものを見た。
私は思わず目を見張ってしまった。
何故かと言うと彼女達の手の中にあるお菓子は真っ黒に焦げているか、または半生になっているものばかりでとてもじゃないけれど、食べれないものだと思ったからだった。
私的には、人間様の食べるもんじゃないと言っても過言ではないと思う。
私は憐れなテニス部Rに心の中で合掌した。


「ユエ〜。出来た?」
「うん。出来たよ。ほれ。」
「お〜♪ユエのお菓子は美味しいんだよね!」
「そう言って貰えて嬉しいよ。」


同じ授業をとっている友人である若菜に作り終わったかを聞かれた。
ボーッと彼女達のお菓子はどうやったらあんな風になるのか考えていたら、知らない間にお菓子作りが完成していた。
なので、若菜に聞かれたときに終わったことを告げてお菓子を渡した。
若菜は私が渡したお菓子を見て受け取ったらテンションが上がっていて、そんな若菜が言った誉め言葉に私は照れ臭くなったけど、喜んでいた。








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