main
□子どもの戯れ
1ページ/1ページ
うだるような暑い日だった。
休み時間というだけで騒がしいというのに、ミーンミーンと鳴く蝉の声が耳に響いて、煩わしい。
ひんやりとする机に頬を当ててみる。
ひどく心地よかった。
隣の席の優等生は、その美しい髪を持ち上げ、下敷きをうちわ代わりに、首筋を扇ぐ。
そこに一筋の汗が流れ落ちた。
常に涼しい顔をしているこいつでも、汗をかくことはあるのかと、妙なところで感心する。
水滴は首筋を伝って、シャツの中へと消えていった。
その様子をじっと見つめていると、彼がこちらに気づき、しかめた顔をした。
放課後、誰もいなくなった教室に、ぽつんと一人、おかっぱ頭の彼が見えた。
教室の戸を開けると、彼はそこでようやく刹那の存在に気づいたようで、こちらを振り向く。
「遅かったな」
ティエリアは立ち上がり、広げていた参考書を閉じ、カバンにつめた。
その間に刹那は自分の席に戻って、カバンをその上に置く。
ティエリアをじっと見つめる。
首筋に、また一滴。
刹那は吸い寄せられるようにそこに唇を押し付けた。
ティエリアの体がビクッと動いて、喉が鳴るのをそこで感じる。
首の皮膚までもが赤く染まっていた。
ひどく、扇情的だった。
舌で汗の流れた道をなめあげ、耳のあたりでわざとリップ音のなるようにキスをする。
逃げないようにあごをつかんだら、小さな力で拒むように胸を押し返されたので、刹那はそれを封じるように腰に腕を回して強く力を入れた。
「せ…刹那…」
甘く響く、彼の声。
赤く染まる目元からついに涙がこぼれ落ちる。
それを丁寧に嘗めとると、ティエリアは怯えたように瞼を閉じた。
それを安心させるように唇にキスを落とす。
だがそれは、徐々に深いものとなっていく。
無理に彼の口内に侵入し、舌を絡めとる。
くちゅくちゅ、と卑猥な音がした。
「ん…ふっ……」
ティエリアは立っていられないかのように、拒む仕草をしたその指で、刹那のシャツをすがるように掴んだ。
それは刹那を煽った。
どちらのものかわからないヨダレが垂れ、むさぼるようにキスをした。
理性が失われる。
刹那はティエリアのシャツをたくしあげ、堪らずその中に手を入れる。
だがそれは、彼の興奮を煽るどころか、理性を覚まさせることとなった。
どん、と胸をおしやられた。
突然の反抗に目を見開く刹那の目の前で、ティエリアは真っ赤な顔をしたまま口許を拭った。
「…君とはまだ、先に進むつもりはない」
涙目で、本当にか細い声だったけれどきっぱりとそう言い放つと、彼はカバンを抱えて教室を出ていってしまった。
取り残された刹那は、エイリアンでも見るような目付きで自分の手を見た。
「俺だって、そんなつもりは…」
刹那ははっとして、カバンを持つと急いで彼を追いかけた。
おわり