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□ガラスの靴を脱がさないで
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「これ、心霊写真が撮れるらしいよ」


「は」


そう言ってクラスメイトであるアレルヤ・ハプティズムが渡してきたのは、どこをどう見ても、どこにでもありそうな普通のカメラだった。

ウキウキとしている彼の表情に霊など信じないティエリア・アーデは若干呆れ、無視してしまおうかとも思ったが、それでもクラスで唯一ティエリアに話しかけることのできる勇者である彼を無下にすることはない。

だが愛想がいいとは言い難いティエリアだ。

鼻で笑って言い返す。


「馬鹿馬鹿しい」


たった一言。
そう言ってアレルヤを置いてきぼりにすたすたと歩き始めるのだ。

でもこれはいつものことなのでアレルヤはめげない。

アレルヤは返されたカメラを抱き締めティエリアに追い縋る。


「じゃ…じゃあ、試してみないかい」


ティエリアは立ち止まって後ろを振り返る。

幼いティエリアにとってアレルヤはしつこくて邪魔な存在でしかない。

少なくとも彼はそう思っている。

だが実際は、ティエリアにとっての唯一の話し相手であるアレルヤの存在はかなり大きい。

少なくとも、ティエリアが学校に通い続ける理由にはなっている。

だからアレルヤの申し出にも、自覚しているのはしつこく付き纏うのを止めさせようと、だが無自覚に彼と何かを共有しようと、仕方ないから付き合ってやるのだ。


「試すって、何を」


立ち止まったティエリアにほっとしたようにアレルヤも立ち止まり、カメラを構えるとカシャリとティエリアを写した。















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