恋は盲目

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恋ってめんどくさいって思ってた
人を好きになる事が
ふとした瞬間に成立して、突然あっけなく崩れる


お互い恥ずかしくて何も話せないくらいの純愛とか
逆に赤ちゃん言葉で会話してべったべたしてるバカップルもいるし
付き合ったとか別れたとか
そんな噂話が皆大好きで、特に学生なんかは「恋愛も勉強です!」なんて
それで上手くいく人はよっぽどの一途だと思う


別れるくらいなら最初から好きになんてならなくちゃ良かったのにね
親によって決められたヒトなら文句を言いながらも恋愛をするよりは苦しくなくてきっと楽だったんだろう


今だからそう思うのかもしれない


絶頂に幸せで、その後に訪れるものを知れば






「お前、俺のモンになれよ」

「………は?」


中学三年の受験真っ盛りの時期だった
憎たらしい事に第一志望だった高校は教師に「無理だ」と言い渡され諦め
モチベーションも何もかもがだだ下がりの正にその時だ
別に恋愛に興味がなかったわけじゃない
ただ、そんな気分じゃなかった






「(これは、…所謂告白?)」


こんな強引な告白なんてあるだろうか
愛の言葉を簡潔に述べるならきっと「好きです」とか「付き合ってください」とか
「俺のモノになれ」?どこの不良だ
普通なら真剣に、歯を食いしばりながら緊張してするものじゃないの
常識に囚われない恋がしたいです?それって子供の発想
正に年相応と言ったところか


ただこの目の前の男はそんな愛の感情も緊張も何も感じられない
ただ軽いノリで、遊び感覚で、相手の反応を楽しんでいるような
見下されているような感覚だった




モテ期ってあるよね
過去に告白された事は何度かあったけど、ここまでムカついたのは初めてだ!

更に最悪なのが相手はあの学校一モテるので有名な帰国子女だった事だ
金髪で無駄に前髪が長いため表情は覗えない
誰からもらったのかは知らないが既に彼のトレードマークになっているような頭に輝くティアラ
校則違反ではないのがびっくり
ただ分かるのは、モテるのが理解出来る程悔しいくらいに格好良い事



苦手なタイプだ、と思ったのは学校に転校してきてすぐ
軽いノリで、面白くて、運動も勉強も出来て、正に完璧だった
彼の周りにはすぐ人が集まって、正直凄い人だとは思ったけど仲良くしないなんて毛根も思わなかった
あんなチャラチャラしてヘラヘラして…

面倒くさそうだし苦手だ
だったら関わらなければいい、まぁ関わろうとしてもあんなにモテているわけだから眼中にも入るはずはないのだが
だから友達関係の難しい中学生活もフツーに過ごし、それなりに勉強も頑張って

何の繋がりもなかったはずだった
私はA組で、彼はG組だったし(クラスはAからHまである)

本当に、何も






意味が分からない上に後ろから突然呼びとめられて唐突に言われ、ただ呆然とした
場所は廊下、時間は放課後
入試が近いため居残り勉強をしていて帰ろうと教室を出たところだ
まるで待ち伏せていたかのように
相手は私が何も言わないのを見て困った様な顔をした、だがすぐに笑った


「返事はいつでもいいぜ、ま、そういう事だから今日から宜しくな幸!」


先ほどと変わらない、少し離れた距離で彼は踵を返し手を振って去ろうとした
だが幸がそれを許さなかった


「え…ちょ、待ってよ!あの、G組のベルフェゴール君、だよね…?」

「そうだけど?知ってんなら話ははえーな幸」

「そりゃ、有名だし!ていうか、何で私の名前…」

「好きだから知ってるに決まってんじゃん」



幸は恥ずかしさに震えたわけではなく、
そんな軽く簡単に‘好き’と言える彼の精神に腹を立てた
そうだから傷つき傷つける人が増える
異性に自分の愛情を伝えるなら真剣にでしょう?


ー…好き、だ!




「気持ちは嬉しいけど、私はベルフェゴールくんの事あんまりよく知らないし、
 それ以前に、釣り合いません
 だから、ごめんなさい」

「釣り合わない?俺がお前に?」

「ちっ、違います!私があなたに!
 ……私、他の子と比べても地味だしずばぬけて勉強出来るわけでも運動できるわけでもないし…
 完璧なベルフェゴールくんとは釣り合わない」

「完璧?俺が?ははっ、分かってんじゃん!
 だって俺王子だもん」

「いや意味分かんないし」


幸が呆れたようにベルをまじまじと見つめる
…本当、目は見えなくて分からないけど、
顔は整ってるし身長も平均くらいだし、そんな彼と今会話が出来てる時点で凄いのだろうが


視線がばちっと合った気がした

するとベルは何故か顔を背けた
な、何ソレ…



「俺の事知らねーなら…まずは友達?からヨロシク
 ま、俺ノリは軽いけど
 本気だから」

「…あ、ちょ」



彼に向かって手を伸ばそうとしたが、幸は動かなかった、…動けなかった
彼の言葉には何だか力があった
「本気だから」と自分に向けた言葉は嘘じゃないと感じた、悪魔で感じただけだが



何だか胸のあたりがドクドクして、痛い
手が、…頬が熱い
もやもやする、よく分からない


これだから恋愛って、メンドクサイ









(やっべ目ェ合った…マジ超緊張した)
(ベルフェゴール…かぁー…)

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