恋は盲目

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絶対今日は嫌な日だ
目覚めた瞬間から思った

昨日あんな事があって寝ざめが悪く
何か鏡覗いたら頭がボンバーだわ歯磨き粉きれてたわ水道がヌルいわ目玉焼きにかける醤油をこぼすわ…
ソース派?知らないよ







案の定、私の予想は当たっていた
嫌な予感というのは非科学的なのに当たる
学校の門をくぐった時点で変だと思った
明らかに周りの目線が違っていて、正直その場にいたくなくて逃げ出したかった


ガラ、教室のスライド式のドアが重いと感じたのはテストの日以外で初めてだ


しいん、と先ほどまでドアの外まで筒抜けだった笑い声が一瞬でピタリと止んだ
…え?何…?



「皆、おはよう…?」



私ははっちゃけてる方ではないけど、暗いわけでもなく
嫌われてはいないと思うのだが
妙だと不安になりながらも自分の机に鞄を置いた瞬間だった



「なあ如月って!!」

「へっ…」



ビビるくらい一気に男子に囲まれる
女子も皆興味深そうに幸を見つめていた、そんな可愛らしい表現は正しくないと思うが


「G組のベルフェゴールフったってほんとか?!」
「あいつフるとか!あんたどんな男がタイプなワケ?!」
「もしかして誰も愛せないタイプ?!」
「なあ俺と付き合わねえ?w」



そう言って集ってきた同級生のはずの男子に、急に獣の様な恐ろしさを感じた

だってお前と付き合えばあのベルフェゴールですらも手に入れられなかった女手にいれたって事で、すげーもんな!
一瞬で、世界が灰色になった気がした

ほら。恋愛なんて皆所詮そんな風にしか見てなくて…、最低!



「私だってベル様好きだっだのにぃ…!」
「つーかさぁ…別に如月ってフツーじゃん…」
「しっ、聞こえるって!クスクス」
「身の程を知れってーの……」



ほら。彼が言った一言がこういう嫉妬心や、傷つく人や恨み、憎む人を生む
なんて法則の悪い循環なの
私だって好きでこんな事にしたんじゃない
あれ以上にどうしろと言うのだ
付き合ったりでもしたらそれこそブーイングの嵐ではないのだろうか



だが皆がそういう理由を言うのも分からなくはない
ただの嫌がらせとしか思えない昨日の出来事は深く自らの心を傷つけた

幸は耳に届く全てが雑音に聞こえた

その瞬間に頭によぎったのは、昨日彼が去り際に見せたあの真剣な表情
ああ、これが
悪循環と言うものだ


「おい、聞いてんのかよ」

「いたっ…!!」

ずっと呆然としていた幸は一人の男子に手首を思い切り引っ張られる














「お前ら、幸に何してんの」













しいん、とまた沈黙が流れた
クリアで心地よい低い声が教室に響いた
振り向いた先には、教室のドアにもたれかかる…ベルフェゴールの姿

一間置いてから女子から黄色い声が上がる
彼は彼を好く女子にすぐ取り囲まれた

ズキン、あれ…

痛い、痛い、…わたし…




ベルはうっとおしそうに女子を押しのけ、男子に割って入ると幸の目の前まで歩み寄り
幸の手首を掴んでいる男子の手を捻りあげた
幸は何が起こっているのか理解できずにただ彼らのやりとりを聞いていた



「いててててっ!!ベル!冗談だって!!怒んなよ!」

「カチーン、何が冗談なわけ?笑えねぇ」

「でもさあ!何で如月なんだよ?お前くらいだったら如月より良い女オトせるのに」
「てかベル、お前今まで一定の好きな奴なんて作らなかったのにさ、
 何だよ、欲求不満にでも駆られた?」


中学生の台詞か


「如月サンなんかよりわたしらのが絶対いいよー!!」
「一緒に遊ぼうって言っても遊んでくれないしい!」
「転入してきた時からそうだよね!もっとうちらにかまってよお!」


意味の理解出来ないものが多かったがことごとく胸に突き刺さる
ああ悪循環だと







「幸はそんなんじゃねーし、 
 俺は本気で好きになった奴としか一緒にいたくねんだよ
 幸を責めるのなら俺を通してからにしろよな」






やっぱりだ
彼の言葉には、何か、威圧感を感じる

またベルの言葉で空気が変わった






それを見計らうとベルは幸の手を取って教室を後にした
あ、予鈴が鳴った
授業までに戻れるだろうか









(幸は、そんなんじゃねー)
(触れられている所が熱い)

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