恋は盲目

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彼は他の誰よりも輝いていた
それは遠くにいた私でも分かる
ただ容姿が良いと言うわけじゃなくて
めんどくさいとかベタとか過去とか自分に言い訳して逃げて
もう 知ろうとしなかった



何か分からない意志が私を後押しした
彼は私の事全てを見透ている様なのに私は何も知らない

知ろうともしていなかったし

きっと彼の瞳は綺麗なんだろうな、と
そんな想像しか出来ていなかったし



ただ今は、以前より少し



幸せ、なのかもしれない







早い時間だった
真面目な私はいつもと同じ様に同じ時間に起きて身支度をする

――あれは、衝動的なものだったのだろうか

幸は食パンをあまり減ってもいないお腹に詰め込む
まだ7時が過ぎた位なのに両親は既に仕事で出かけてしまっている
兄弟のいない私はこの場で一人

あの時、胸の内がぎゅっと締めつけられる感覚に囚われた
良い予感では無かった気がする

嫌に、懐かしい感じが


違うから、ベルは

鞄を手に玄関の扉を開けた
するとすぐに目立つ金色が私に手を振るのが目に入った


「ししっ、はよ」

「な、何で…」

「カレカノで朝登校するっておかしー?」

「あ…ううん!嬉しいよ、ただ、こんな地味な私なのに…隣歩いてて、恥ずかしくないかな…って」

「んなコト気にしてんの?言ったろ、俺は好きな奴としか一緒にいたくねーし」

「そ…か、うん…ありがと!」


玄関先で穏やかな時間が流れた
幸は微笑み、ベルは一瞬固まったように動かなかったが、すぐに口元を綻ばせた

「その顔が好きなんだ」

なんてのは言えない
何だかこっ恥ずかしいし俺らしくもねー気がして
だから代わりに、幸の温かい手を取った



「今度の日曜さ、デートしようぜ」


ああ、少しなんかじゃないね


「ししっ、王子とデートとか、幸せだぜ幸♪
 俺も幸せだけど♪」


こんなに

こんなに幸せでいいのかな




今度 は後悔しない恋をしたい




言葉の代わりに、こくんと小さく頷くと
彼は今までに見せた事のない位照れていた

本当は、ここに来るまでの道のりも緊張して緊張して大変だったんだ






(なんてね)
(今はただ、この幸せに酔いしれていよう)



好きだよ

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