恋は盲目
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学校の帰り、今日の授業で分からない所があったと言えば、ベルくんが「俺んち来いよ」
と言ってくれたので行くことになった
いかにもカップルみたいな感じの雰囲気は私達には到底出せないだろうけど
付き合ってるんだなあって、変な気持ち
あの騒動があって以来、誰も文句や陰口を言ってくる人はいなかった
ありがあい事なのだが、何だか上手くいきすぎて怖い気もする
「お邪魔します」
「俺しか住んでねーし、これからは‘ただいま’でいーぜハニー♪」
「ふふ、それ冗談?」
「本気だっつの」
「えー」
ベルくんのお家は一人暮らしにしては広すぎる気がする
その割には清潔感溢れる、家具の少ないシンプルな部屋
ベルくんっぽいと言えば、ベルくんっぽい
ガラス性のボックス式になっているテーブルの中にはありとあらゆる形のナイフが並べられていた
綺麗な形もあればゴツゴツしてて不格好なものもある
興味はあったけど、何だか物騒だと思った
幸がまじまじとそれらを見ているものだからベルは可笑しいと言う様な表情をした
「ソレ、俺の趣味、かっけーだろ?」
「いや…あんまり」
「てんめっ!どれがお気に召さなかったんだよ、言ってみ」
「コレ…」
幸が指差したナイフを見てベルは顔をしかめた
「…それ俺のオリジナルナイフ………」
「えっ嘘っ、いや…カッコいいよ!」
「そんな取ってつけた様な褒め言葉いらねーよ…」
不機嫌そうに拗ねたから幸は可笑しくて笑った
それにつられて今度はベルも笑った
一間置いてベルは立ち上がると、どこかの部屋へと入って行き、戻ってきた時に手には鍵らしきものが握られていた
そのテーブルの鍵と、ベルは言った、やたら嬉しそうだ
ベルはその中から一つナイフを取り出した
「将来、ジュエリーデザイナーとかやってみたいと思ってさ
ナイフの趣味、どっかで活かせると思って」
「へえ…、いいね…素敵だよ、夢があるって
ベルくんならきっとなれるよ」
「ししっ、きっとじゃなくて絶対だぜ?」
「…そだね!あっ、そうだ」
「?」
幸は学校の鞄の中からじゃらりと金属製の何かを取り出した
それをベルに差し出す
「ストラップ、お店で見つけて、一目でベルっぽいと思って買っちゃったの、あげるね」
幸の手には、真ん中に小さな粒のガラスがついたティアラの形をしたストラップが握られていた
ベルがぴた、と固まって動かなくなった
…え?も、もしかして、気に入らなかっ…
「幸っ!!」
「わぁ…!」
がばっ
急に抱きついてきた
「さんきゅー!王子ちょー嬉しいぜ♪」
「そ、そう?良かった………」
どきどき、した
布がない、みたいな
肌と肌で触れ合ってる感じ
温かいなあって
しばらくその状態が続いて
ベルは幸の首に顔をうずめてきた
「……ッ…あっ」
「…しし、感じた?」
「ばっ馬鹿…」
するり、とリボンを取られた
…あ、………わたし、たち
もしかして、……初めて?
しし、俺もさ、こう見えてもハジメテ
だから加減の仕方とかさ、知らねーけど
傷つけない自信はある
ベルの言葉は、全部が優しいね
だから私は身を全て委ねてしまったけど、間違いだなんて思う日はきっと来ない、ううん、絶対来ない
心の中で渦巻く罪悪感なんかよりも、こっちの気持ちの方が大きく膨らんで
どうにかなってしまいそうだった
(好きで好きで、しょうがないんだ)
(ベルくんだから、怖くないのかな)