恋は盲目

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駅前で待ち合わせをする
恥ずかしいからベルが歩いてくる方向の逆を向く
後ろから、ぽんと肩をたたいてくれるのを待ってる
「わり、ちょっと寝坊してさー」なんて言い訳が目に浮かぶ
待ち合わせの時間はとっくに過ぎていたから
この電車にも乗ってこなかった、きっと次だ

慣れないヒールを履いて、まだまだあどけない顔に似合わないのに頑張ってメイクしておしゃれして
ベルよりずっと楽しみにしてた


きっとこんな事をしている時期ではないんだろうけど
身体を重ねたあの日から、私はベルの傍にいたくて仕方がない



本当に好きなんだ、



…同じ、あの時と

―――…同じ?




「違う、ベルは」


ぽつりと、呟いた時、
誰かが幸の腕を強引に引っ張った


「きゃ…!!」


突然の事で声が裏返り、周りの人が疎らだったために助けも求められなかった
背後から口を押さえつけられた
そのまま道路に停めてあった車に押しこまれ
その中で布をかまされた


「――ッ!!!!」


じたばたと暴れれば頬を殴られた
うっすらと口の中に血の味が広がった
車の窓はマジックミラー式の様になっているようだった
内側から外は見えるが外側からは見えない

幸は、車の窓の外にずっと待っていた人物を見た
―――ベルッ!!!

だがそれは景色として流れていった


瞬間、ヒヤリと冷たい何かが触れた
―――…っやだ!!何されるの?!



ビリビリ、と
布が破れる音が響いた


ああ、こんな事なら
もう肌寒い季節なのに頑張って露出の高いワンピースなんか着なければ良かった
今更後悔しても遅いのだけれど


〜〜〜♪♪


携帯の着信音が鳴った

ベルからだ
きっと待ち合わせ場所に私がいないのを不思議に思って


「ベルッべるっ!!べるぅっ……」




手をのばしても、届かなかった




「ごめ…ベル………」



布が邪魔して上手く舌が回らないけど
幸は確かに、謝罪の言葉を口にした
今から為される事を知ったら、貴方は離れていくのだろうか

至る所の違和感と嫌悪感に、私は意識を手放した







(幸…怒って帰った?やっべー…)
(出来る事なら、消えてしまいたい)

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