恋は盲目

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「林さん、診察室へお願いします」

「はい」




独特の匂いが漂うこの場所は
大きなお腹を抱えた女の人でいっぱいだ
ガラス越しに沢山の赤ちゃんが見えた、可愛い



………どうしよう
こんなとこ、中学三年生が来るとこじゃない



先ほど検査が終わって、今は結果をお母さんが聞いているところ


どこの誰だか知らない人の赤ちゃんなんて、欲しくない
でも、もしも身籠っている事があったら、その時は……




ガラリ、と早く開いてと思いながらも、このまま一生開かなければいいのにと思っていた扉が開いた
そこからお母さんが優しげな表情を浮かべ、私に歩み寄ってきた
私の頭に手をのせて、優しく撫でる
それだけで、もう涙が出そうで


「……大丈夫、何処も異常はなかったって」


瞬間、本当の涙が流れ落ちた



「ふぇっ……よかっ…た………ベル……」



ベルは今ここにはいないけど、真っ先にベルの事を想った
私、本当に好きな人じゃないと、こういう事にはなりたくない

私、泣いてばかりだ
もっと強くならなくちゃいけないかな
ううん、強くなるね
ベルに心配ばかり、かけたくないし

余計な涙を流して、ベルまで悲しませたくない



そうだった、私は…
泣いてばかりだった…











ベルは一体何処へ行ったんだろう
‘オトシマエ’つけてくる、と言ったきり戻ってこない
幸は結果だけをメールに書き、送信した









(早く安心して欲しい)

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