蛙王子

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「消えてください」




そんな事言うつもりなんて無かった
本当は、さちの言葉が凄く嬉しかったはずなのに
何だろうこの胸の内に渦巻く霧の様な違和感は

さち、ミーは優しくなんてないんですー
だって、さちの事を…こんなにも簡単に傷つけてしまったんですからー
優しいのは、貴方の方なんですよ



「でもさあ、卯月ってフランに似てちょっと陰気なとこあるよなー」


―――は?
我が耳を疑った



「あー分かる!この前なんか一人で花壇の傍で花とかに話しかけてさー
 友達いないんじゃね?」

「じゃあフランとお似合いだな!根暗カップルw」

「何ソレ超ウケルw」




自分が傷つけたはずなのに

どうしてですかねー

他人にさちの事を言われると

ムカつく




「卯月ってさー」


その他の生徒が便乗するかのように加わってきた

ああ最悪ですねー
これだから人を好きになるなんて無理だったんです
だから、さちの事も、




好きになんて、なってはいけなかったはずなのに




黙れよ




教室の扉の前、フランは俯いたまま…低い声で呻くように






「………何だよフラン、お前が追い出したんだろ?」

「それともナニ?お前、あんな事言っといて卯月が好きなわけ?」





「……………好き?」




フランは呆れた様に笑った
相手にも、自分自身にも



そうですか…ミーは





「―――………はい、ミーは、卯月さちが、好きみたいですねー」



もう、こんな眼鏡もいりませんねー
わざわざこんな汚い奴らを直接肉眼に叩きつける必要もないと思っていましたがー
目に焼き付けたい人が出来たのでー


ばっ、と心の内が晴れた気がした
自分に嘘はつけないみたいだ
きっとこの判断は、余計さちを苦しめてしまうだろうけど
きっと彼女なら、ミーの事を分かってくれる
こんな醜い心のミーでも、小さな弱々しい花にも敵わないミーでも



自信に満ち溢れている様な顔で、その場にいる奴らの顔を見渡した


瞬時にざわめいた
主に女子が、だ




「フラ…おま………」




男子の一人が呟いた時、フランは既に女子に囲まれていた




「ご、ごめんねーフランー!!」
「今まで言ってた事全部嘘だしいー!!」
「こんな格好いいのに、卯月にはもったいないよお?」




何を言うかと思えば
(笑)ですねー



どけ




にこり、馬鹿にするように笑った
女子の集団を掻きわけてフランは走った



キーンコーン……



チャイムなんて気にならなかった









馬鹿ですねー
【それはミーも変わりませんが】





カクシン.

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