蛙王子

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キスをした
お互い初めてだったから、触れ合うだけのものだったけれど
初めてこんなストレートに想いを感じる事ができた

凄く凄く、嬉しかったよ…



なのに





「フラン君」





名前を呼んだ時


ぶわっ、と白い煙みたいなものが辺りを渦巻いた





「きゃ…!!何…?!」


それは一瞬の出来事だった


「うししっ♪やーっとアイツ腹くくったワケ?」



フラン君がいたはずの……私の目の前に立っていたのは
あの綺麗な翠色の髪、そして今日初めて見た髪と同じ様に透き通った翠の瞳をしたフラン君じゃなくて

今まで会った事もない、前髪の長い金髪の男の人だった
頭の上にはティアラ、きっと私やフラン君と同じくらいの歳だろう



「あっ…あな…た、誰ですか?!」

「あ?」



その人は忘れていたかの様に私に近づいて来て、ずいっと顔を覗きこんできた



「ふうん、結構カワイイじゃん?カエルが選ぶにしてはさ…」

「なっ――…っ」



私は言い返そうとした

初対面で何て失礼な人なの!!って




でもさちの言葉は遮られた
フラン君とは性格がま逆な、何とも自分勝手そうな金髪の男のキスによって



「ふぁ……?!」



しかもあろうことかさちの唇を割って舌まで口内に侵入してきた
キスも、さっきのフラン君とのあれが最初だったのに


こんなの………!!!



「やっ…!!!」



ドン!と相手の胸板を思い切り押し、何とか逃れる事が出来た、相手は一歩程後ろにさがる
じわ、と再び涙が出てきた

やだ…好きでもない人と、キス…なんて……!!
さちは口元をごしごしと乱暴に拭い、相手をキッと睨みつけた



「最低……!!あなた、誰なの?!」

「…しし、泣いてる顔もかーわい」


からかってる
そうとしか思えなかった


「ふざけないでよ!フラン君は何処?!どうしてこんな事したの…?!」

「質問が多いオヒメサマだな」



ししっ、と機嫌が良さそうにベルはさちの頭を撫でてきた
さちはそれを払いのけるとベルとの距離をとる
ひっでー、と言いながらも笑ってる
…最悪!!




「今機嫌がいーから全部教えてやるよ、
 俺の名前はベルフェゴール、ベルって呼べよな
 んで、お前が言うフラン…カエルは、今催眠状態で俺の中に眠ってる」

「え…?!何……どういう…?!」

「んで、最後の質問だけど……俺がお前にキスしたのは
 単なる気まぐれ、ししっ」



世界が白黒になったみたいだった

突然訪れた事態に、私は何も考える事が出来なかった




「お前が探してるフランはもういないんだよ
 
 俺が王子様だから

 ホラ、童話のカエルの王子様って知ってる?

 姫がカエルにキスする事によってカエルが元の姿、王子に戻るってヤツ」


「そ…んなの………」



何それ…何も信じられない
何が起こったの、フラン君に何が起こったの


もう


フラン君には会えないの…?




「ありがとな、名前は知らねーけど、アイツを落としてくれて」



おかげで俺は自由の身

今までなあーんにも出来なかった分

遊んでやるぜ?





王子
(それは私が想像していたよりもずっと)
(最悪な性格だった)





ヒゲキ.


 

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