化学結合

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嫌な位沈黙したその場所は体育館
そう、ついさっきまで平和な入学式を迎えようとしていたんだ
…さっきまでは






「マジかよ…何かもう泣きたい」








時間は遡り…



【暖かい春の日差しに誘われて――…】



ざわざわと校長であろうハゲたじーさんが挨拶をしていても生徒達は中々静かにならない
そういやここ国立の中でもけっこー派手な人多いよな
服装の規制も緩いらしいし 
そりゃ人の事言えないけど?
あたしより着崩してる奴は中々いないけど?
皆スカート短かいな
そりゃ人の事言えないけど?


しかし私にとってはありがたい緩さだ
中学の時なんて散々だった


いつもトンファー片手に学校中を徘徊してる黒ずくめの狼のような奴が毎日の様に追ってきてはあたしをめったうちにするんだ
避けてたけど
おかげで波乱万丈な中学生活だった、まぁそれなりに楽しんではいたけれど
だから高校生活は自由気ままにエンジョイしてやるんだ!


「脳内妄想の激しい奴だな」

「うっせえ隼人」

「お前がな、声に出てたぜ」

「マジか」



【次は新入生代表の挨拶です】


騒がしい館内にキーンと嫌な機械音が流れ思わず耳を塞いだ
じろっと獄寺に流し眼をした



「呼ばれてるぞ忠犬」

「しばらくはそれも休みだっつの、忠誠は誓ってるけど」

「獄ツナでもやってろ」

「後で果たす、俺の勇志をその目抉って見てやがれ」




物騒な捨て台詞を吐いて獄寺は行ってしまった
やっと静かになったと思ってギシギシ音を立てるパイプ椅子に深く座った
獄寺の挨拶を後でからかってやろう。そう思い話を聞く体勢を整える

笑ってやんよ!!
さあ!かめ!!かんで笑いの渦を巻き起こせタコヘッド!!

その矢先




【君達、うるさいよ】




わあ美声だ、とか思ってる場合じゃなかった
一瞬でその場が凍りつく様な気がした
正しく言えばニコの心と顔面が

















「……嘘だ…」














弱々しく呟いた、絶望に似た何か

それはニコがよく知る、あの男
そ、そんな







だが間違いなくステージの上のマイクに向かって声を発しているあの男は…

ステージの下で待っている獄寺も目を見開いて凍りついていた







だがあたし達が恐れるその男の言葉など見向きもしない哀れな新入生達
あたしに至っては見つからない様に前の席の奴に身を隠してるっつーのに!





あたしと獄寺以外の生徒はあいつを知らない
あいつの恐ろしさをしらない

「あ、何か真面目そうな奴がステージの上で注意してやがるよウケるw」程度の事だろう







この穏やかで平和な雰囲気も今日までだな、
グッバイ日常…くっ…私の華の高校生活!









つぎの瞬間




バキッ



誰か立ち歩く勇者が居たのか、そいつに向かって何かが命中した
金属的なもの、長いもの、アイツが持ってるもんでそんなのって



「夢じゃねーなコレ…」





冒頭に至る





先ほどとは裏腹に、急に静まり返る館内
そりゃそうだわな…
全ての視線はアイツに注がれた






【新入生代表、雲雀恭弥
 長ったらくて難しい挨拶なんて低脳な君達には眠くなる要素でしかないよね
 だから簡潔に述べてあげるよ
 これからは僕がこの学校の秩序だ、何か問題があるならすぐに僕の元へ届くようにする
 異例は認めない
 僕に逆らった時点で罰を与える…彼の様にね…】




そうして雲雀は先ほどトンファーを命中させた男子生徒に冷たい目線を注ぐ
その場の誰もが生死の境に居るような気さえした

そういえば新入生代表は二人いるって聞いてた
獄寺と同じく全教科満点のトップで合格した天才…


その後の獄寺の挨拶は普通のあたしだったらお腹を抱えて笑い転げているだろうけど
そんな余裕がない程その場は何とも言えない威圧感で包まれていた









グッバイ日常
(そんな…)
(そんなバナナ!!!!)




     
 

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