俺と雲雀の七日間

□前日。
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『ここが並盛か…』




長い髪を風に弄ばされながら、俺は今
今日からここで一日の八分の三くらいを過ごすであろう並盛中学校の門の前に立ちつくしていた

細かいとか言うな

つーかやべーよどうしよ


『遅刻じゃん、あらかじめ道を調べておくべきだったぜ、無念だ』


転校初日から慣れない道に手間取って目的地に着いた頃にはもう昼過ぎ

あーちゃ、これ遅刻とか言うレベルじゃなくね?

あ、元気な生徒達がグランドに出て何かやってる
サッカー?俺も混ぜてけれ


そう、俺ことショウがそいつらにかけよろうとしたら


グランド中にいた生徒達が時計を見るなりそそくさと退散していくではありませんか
何、この光景
ちょ、俺避けられてる感じがしてものっそ気分悪いんですけどー


ショウは腕を組み首を傾げながらその場に佇んでいた





「ねぇ」





しばらくすると、

誰かの声が耳に入った

男か

あ、そういや俺職員室行かなきゃだったぜ



「早く戻らないと、授業始まるよ
 予鈴はとっくに鳴ってるし、聞こえなかったの?」

『あ、ちゃおっす!!
 ちょっとお尋ねしたいんですが、職員室ってどこっすか?』




そう言うと相手は話が噛み合ってないと言うように機嫌の悪そうな顔をしてショウを睨んだ

雰囲気的にはショウより年上か…

自分を目の前にしながら焦る様子もない、しかし確かに並盛の制服を着ている

…まさか


「君、もしかして転校生?」

『あ、よく分かったっすね、文月ショウっす……ってわぁ?!』




ビュッ!!

突然何かが半端ないスピードで飛んできた


ななな…!!
なんて危ない!!!


間一髪でそれを避けて相手の行動を覗うと
奴は驚いたように目を丸くしていた



「君…避けられるんだ、凄い」

『はは…いきなり物騒っすね
 それって、トンファー?』

「それ以外に何があるの」

『ん―――…おm』

「下ネタ禁止、咬み殺すよ」



ええー…何て横暴な人なの
自分から聞いといてぇ


切れ長の細い目
漆黒を思わせるような身なりだ
てーか制服違くね?学ランて
しかも奴の腕には堂々と「風紀委員」という腕章がつけられていた
何コイツ、他校の風紀委員?何故に?


頭に浮かぶのは疑問ばかり


しかもまた戦闘体勢に入ってるし


うわ、こっち来た




『うわっと!』



また間一髪で避けて
さらに連続で来るので避け続ける

うわうわあっぶねーな何コイツ!!!

やっとのことで攻撃の嵐から解放されると流石に息が切れていて、
ショウは奴を睨みつけた



『…ハッ…ハッ…何しやがるてめー!!』

「……気に入った、僕の攻撃を全て避けられるなんてね
 敬意を評して職員室まで案内してあげるよ
 遅刻は後で反省文でも書いてもらおうか…
 着いてきて」

『…ハッ……え……?』




そいつは何事もなかったかのようにスタスタと歩き出した

え、え、状況飲み込めてないんすけど
とりあえず俺は無事なんだな!そうなんだな!

言われるがままに着いていった





***



『話が違うだろ』

「何が」



こいつ…!
何か転校初日に大遅刻をしてしまった俺に襲い掛かった挙げ句 目的地である職員室など目にも入らず連れてこられたのは、


「座りなよ」

『待て、職員室』

「反省文が先、逆らうなら20に増やすよ」

『優先順位絶対違う』

「はい、五枚追加ね」

『あああ!嘘!反省文万歳!』

「だったら黙って書けばいいよ」

『(何だこの唯我独尊な輩は)』



すると目の前の男はまるで心を呼んだかのようにニヤリと笑い



「自己紹介遅れたね、僕は雲雀恭弥
 この学校で風紀委員をやってる」

『へえーここで…ってここで?!
 だって制服違う…』

「これは僕のトレードマークさ」

『はあ…学ランが……』



…ぷっ……

心の中で嘲笑った
そしたら鼻にトンファーがかすった
ぎゃあああ




「君、今笑ったね?」

『滅相もございませんです』

「嘘、君って嘘つくのが上手だよね、だから嘘って分かる」

『確かにお前の本当って分かんねーとか言われるけどそれってほとんど確率ってことじゃ』

「咬み殺す」

『ぎゃあアアァ、くんなキョーヤ!!』

「誰が呼び捨てにしていいと言ったの?」



ばたん!と応接室の扉を乱暴に開け飛び出す
後ろから雲雀は鬼の様な魚層で追いかけてくる
ぎゃああリアル鬼ごっこ!!!恐怖!!



この時の俺は不注意だった

目の前の階段を駆けおりようとしたら、つまづいてしまうなんて

俺ってつくづく運のない男だと思った




『うわあああああ(涙』

「――っち…!!」




舌うちっぽいのが聞こえたがその前に俺の意識はホワイトアウト
死ぬ前にビフテキが食いたかった

































あれ







痛みを感じるかと思った

でもそこまで居たくなくて

その代わりに身体がズシリと重くて

まるで人一人が上に乗っかっているような―――…








『俺生きてる?』












あれ

おかしい

いつもより声が低い気がする

あと視野が狭いかな








「……何で僕が目の前にいるの」








突然天からのお声が





ああ俺、逝くのか?

だって俺が目の前にいるもん

これが俗に言う幽体離脱?






「何で俺…目の前にいんの」
 

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