話
□住所不定、天国
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住所不定、天国
「天国ってどこにあるアルかー?」
「さあ、どこかなあ?」
「死んでみねーとなァ、そればっかりは」
「じゃあこっから飛び降りたらわかるネ」
足をぷらぷらさせながら空をふり仰ぐ。視力はわりと良い方だけど、何処にも天国らしきものは見付けられない。スカイフィッシュも、見えない。
天国は一体何処にあるんだろう?スカイフィッシュは何処を泳いでいるんだろう?
大前提として、私はその存在を信じている。ついでにネッシーも河童も宇宙人なんかも。
信じるって悪いことじゃない。だってなんだかワクワクする。
「お前さー、落ちんじゃねーぞ」
「馬鹿にすんなヨ、そんな間抜けじゃないアル」
「でも万が一ってこともあるし」
両隣の心配性共は示し合わせたように私のYシャツの袖をつまんだ。
ヘタレめ。こんなんで落下防止になるとでも思ってんのか。そう思ったけど、少し嬉しかったから言うのはやめておいてやることにした。
「いざとなったらお前ら道連れにするアル」
「「それは嫌だ」」
終
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