話(連載)
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眠りに落ちたのが玄関ならば目覚めたのも玄関だった。季節は秋の始め、夜間や明け方は冷える。そんな中で布団もかけずに寝ればどうなるか。その問いに対する答えは自ずと出てくる。
「ぶぇっくしょい!」
戸の向こう側にも聞こえるほどの大きなくしゃみをし、銀時は慌てたように起き上がった。
家の奥にいた二人が音を聞き付け、文字どおり飛んでくる。
「銀ちゃん風邪ひいたアルか?」
「玄関で寝るからですよ」
「起こせよそこは!今さら偉そうに言っても遅ェんだよ!っくしょん!」
再びくしゃみをして銀時は苛立たしげに鼻をすすった。簡単に風邪をひくような体質ではないはずだが、長いこと自堕落な生活をしていたせいで随分弱っているのかもしれない。
鳥肌のたつ体を擦りながら、銀時は目の前の新八と神楽を睨み付ける。
しかし二人の精霊も負けじと半透明な顔で銀時を睨んだ。
「起こそうとしましたよ!なのに銀さんぐっすり寝てるから…」
「イビキうるさくていっそ燃やしちまおうかと思ったアル」
「おめーら…」
もっと主を大事にしろ、そう言いかけたところで、銀時の後ろの戸が鳴らされた。控え目ではあるがはっきりと意志を持った音だ。
階下の人間ではないだろう。彼女たちならもっと遠慮のない音をたてるし、大抵は家賃の催促の怒声がついてくる。
「誰だよ朝から…」
「昼ですよもう」
冷静な新八の言葉を聞き流し、銀時は乱暴に引き戸を開いた。
「…」
そして、閉めた。